視察報告
視察日2009/10/15
視察地 愛媛県今治市「地産地消について」
担当課 今治市産業振興部農林振興課地産地消費推進室
1.今治市の概要
愛媛県の北東部に位置し高縄半島の東半分を占める陸地と、芸予諸島の南半分の島しょ部からなり、緑豊かな山間地域を背景に、中心市街地の位置する平原部から世界有数の多島美を誇る青い海原まで、変化に富んだ地勢となっている。
平成17年に合併し、人口18万人となり松山市につぐ県下第二位の都市になった。
村上水運発祥の地。日本の船の1/3は今治市で作られた、日本一の海運市でもある。
また、全国の国宝となっいるよろい・かぶとの約8割はここで作られた。
特にしまなみ海道の島々、身の引き締まった魚介類は自慢できるものである。
尾道市と橋で結ばれて10年。歩いて橋を渡ることができることもPRできるものだそうです。日本のエーゲ海、海のシルクロードとも言われるそうです。
2.地産地消のこれまでのあゆみ
1988年 議員発動により「食糧の安全性と安定供給体勢を確立する都市宣言」議決
2003年 市農林振興課内に「地産地消推進室」を設置
2004年 米の生産調整にかかわる産地づくり交付金を活用した環境保全型直接支払い開始
2004年 市立鳥生小学校で食育モデル授業実施
2005年 新しい今治市において「食材の安全性と安定供給体制を確立する都市宣言」を議決
2006年 「今治市食と農のまちづくり条例」制定
2007年 「今治市食と農のまちづくり委員会」(事務局は農林推進課)を発足
2007年 日本有機農業学界フォーラム開催
2008年 今治市有機農業推進協議会設立
2008年 「有機農業モデルタウン」選定を目指し、有機農業総合支援事業に公募
2008年 「今治市有機農業振興計画」策定・国の有機農業総合支援事業スタート
直売所さいさいきて屋において「親子クッキングスタジオ」開始・さいさいきて 屋から、学校給食へ地元農産物の納入開始
2009年 市民2000人を対象に「有機農業に関するアンケート」調査開始・農を変えたい! 全国集会in今治、有機農業推進地域連携会議開催
☆今治市の食と農のまちづくりの取り組みは、25年前の消費者運動や農民運動などの市民活動に端を発しており、行政主導ではなく市民の取り組みとして発展してきた。
これを時代的にみると昭和57年から63年までを黎明期(学校給食)、63年から平成10年を充実期(学校給食)、平成11年から14年までを発展期(学校給食)、15年から18年までを学校給食から市民生活への発展期と分類することができる。そして、食と農のまちづくり条例制定以降は、食育や福祉を含めた総合政策期を迎えている。
3.給食について
小学校30校、中学校19校、幼稚園3園、あわせて15300食を24の調理場で作っている。
24調理場すべてに栄養士がいて、各調理場で栄養士が献立を立てているので、毎日24種類の給食が作られている。
現在、共同調理方式から自校式へ整備してきている。自校式調理場の良いところは、調理している調理員の姿が見える、音やにおいを感じることができるという食育効果が大きいと感じている。
有機野菜を使用する事・・・虫、土がついているので一回多く洗浄している・規格に合わない、大きさがそろっていないのでカッティングマシーンを使えないことが多く、手作業でカッティングしている。
季節の旬のものを使用している・・・おいしい、栄養価があることと、路地野菜はハウス野菜に比べて1/8から1/31の省エネ(Kcal)になる。
食材は今治市産地のもの4割、県内産地の物まで入れると6割り、その他が4割となっている。なるべく近くのもの、市内のもの、県内のものという選択をしている。
★昭和58年から朝7時半に生産者が直接当番制で食材を調理場へ配達。・・・子ども達と交流が生まれている。
★10日に一度精米している。・・・今治産の有機米で、他のお米と混じる心配があることと、子どもにはつきたて、炊きたてのおいしいご飯を食べさせたいから。・・・おいしいと好評で残飯が少なくなった。
★地元産の物に変えることで新たなマーケットを作ることができた・・・・給食のパンの小麦粉を米国産から今治市産のものに変えた。パンの小麦粉はニシノカオリ。週のうち米飯給食は週3回、パン給食は週2回である。以前は小麦はこの地域ではあまり作られていなかったが給食で使用するようになったことで作られるようになった。一般家庭の需要もあるが、現在は給食だけの分しか確保できていない状況。いままではアメリカへお金が行ってしまっていたが、現在は地元に行っている。大きな変化。給食はローカルマーケットを創出する力もある。非常に狭い範囲の規模の小さいマーケットであるが価値のある意義深いマーケットであると考えている。
★とうふの日・・・今治産大豆の豆腐を使用するために「豆腐の日」を設定。学校給食1校だけでは特別な豆腐を作ってもらうことは難しいので全調理場いっせいに豆腐は注文する工夫をしている。
★給食から一般企業や家庭への波及効果・・・今治国際ホテル(今治一大きいホテル)が農協の直売所と提携した。家庭からの要望で献立集を発行。
4.食を変革する授業について(小学生)
1. 10年後の食卓の絵を描かせる。
2. うんこと食事のチェック
3. 長崎大学 中村修助教授を講師に招き、うんこと食事の内容についての授業をする。
4. 大人の食事をチェックする。(10年後の自分達の食事という位置づけ)一人暮らしの大学生の一日の食事を例に挙げる・・・バナナ一本、スナック菓子など・・・子どもからは「こんな食事はしたくない。」という声が上がる。→なんにも勉強しないとこんな食事になることを教える。
5. うんこと食事の関係を知る授業・・・うんちは健康のバロメーター
6. 食事と生活習慣病についての授業・・・東京都荒川区ひぐらし小学校宮島則子栄養士を講師に招いた・・・大変具体的な授業をしていただけた・・・ポテトチップスによる油と塩の実験。合成ジュースを作る実験は水500cc、角砂糖14個(50g)、合成着色料黄色4号、クエン酸、オレンジエッセンス、みかん果汁でつくり実際の市販されている合成ジュースと比較する→品質表示の見方の授業につなげていく→飲むのだったら愛媛県の特産のみかん100%のジュースを飲みたいと多くの子どもが言うようになる。
7. 野菜をたべる技を伝えるおひたし等、実際に調理もする。・・・案外簡単に調理できることを知る。
8. 調べ学習をする・・・理想の食事の食材にはどんなものが良いか
9. 買い物の技・野菜を食べる技・片付けの技を教える。
10. 再度「理想の食事」の絵を描いてもらう・・・和食中心の食事を多くの子どもが描く。この絵を書いた理由として、体に良いから、自分で作ってみて意外と簡単だったからと言う子どもが多い。「体が健康になる食事」について教えている。
★全市内の学校に作成したDVD「食について知ろう」教材、指導要綱を配布している。
☆その他のトピックス
★ 新しい取り組みとしてキッズキッチン・・・小浜市をまねして始めた。5から6才児を対象
★ 500人規模の学校給食残渣は10キロ前後であり、かなり少ないほうだと思う。
★ 食材生産者を給食の時間にテレビで毎日放映している。
★ レンコンが特産の地域では「わくわくれんこんランド」として小学校3年生で1年間レンコンの栽培から始まり、国語の作文もれんこんがテーマ、理科の観察もれんこん・・と各教科においてもれんこんをテーマに取り上げるように授業を展開している。そのため、食卓の絵を描かせてもれんこんのきんぴら、れんこんの煮物などれんこんの絵を描く子供が多い等、食育効果が高い。
★立花小学校では毎年「給食感謝祭」を開催し、生産者の方もお招きして、その日は子ども達が料理をして日ごろの感謝を伝えている。
★食育力のある食材、食育力のある献立で伝えていくことが大切であると感じている。
★おうちで手軽に学校給食・・・家で作りたい! 食材を購入したいという声にこたえて、献立集の販売も開始した。(一冊500円)
★実践農業講座、集落営農組織育成支援、今治市民農園(有機無農薬でやることが条件)にも取り組んでいる。
★さいさいきて屋・・・農協が作った直売所であるが、野菜や加工品などの直売だけではなく、レストラン、カフェ、市民が自由に使える調理室(料理教室も開催している)、生産現場を見ることができるように農園が併設、簡易なビニールハウスの貸し出しなど、食育効果も持たせた施設となっている。主体は農協であるが、開設時の併設農園の整備費用、レジと直結したポスシステム等の費用は市で補助。食育効果の高い施設となっている。

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