2015/7/19

東京二期会『魔笛』プレトーク  公演情報

東京二期会とリンツ州立劇場共同制作、モーツァルト『魔笛』も残すところあと1公演となりました。お蔭様で昨日、今日も完売。明日も当日券数枚のみが予定されているとのことです。二期会所属歌手たちの素晴らしい演奏技術と表現力の結集した音楽が、総合芸術としてのオペラに現実味と臨場感を息づかせてくれています。http://www.nikikai.net/lineup/diezauberflote2015/index.html
その日々の研鑽と実力を心から讃え、最大級の拍手を贈ります。
ご尽力くださった沢山の皆様、そして何より満席のお客様のご来場に深く感謝申し上げます。

東京二期会『魔笛』公演詳細 



二組の公演の初日(プレミエ)開演前にリンツ州立劇場より来日中のドラマトゥルク、ヴォルフガング・ヘンデラー(Wolfgang Haendeler)氏によるプレトークを開催し、斬新な設定でありながら、オーストリアの人々に「まるでモーツァルトが帰ってきたようだ」と絶賛された、亜門『魔笛』ワールドの魅力について、そのモーツァルトと深いところでの繋がりについて、お話を伺いました。公演鑑賞の一助となれば幸いです。

[※]…「ドラマトゥルク」とは、文学、美術、哲学、歴史等の広範な専門知識をもって、オペラや演劇の上演を時代考証、翻訳、執筆、広報、運営に至るまで様々にサポートするスペシャリストのことです。


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【宮本亜門「魔笛」の中心的メッセージとは】 プレトークより

「魔笛」導入

2013年のことですが、最初からオーストリー・日本の共同制作として計画された劇場プロジェクトとして、この『魔笛』のプロダクションに、宮本亜門氏と彼のチーム、また我々の劇場の音楽監督Dennis Russel Daviesデニス・ラッセル・デイヴィス氏との共同作業に、私自身が作劇法上のコンサルタント(ドラマトゥルク)としてかかわれた事は、私にとって栄誉であり大きな悦びでありました。

オーストリアにおけるLinz市はオーストリア北部Overöstereich州の州都であり、SalzburgザルツブルクとWienウイーンの丁度中間に位置しております。そして、この二つの都市は音楽と文化において偉大な伝統でつとに知られており、天才作曲家ヴォルフガング・モーツァルトと深く結びついております。彼は1756年にザルツブルクで生まれ,1791年にウイーンで亡くなり、そのあまりにも短い生涯を閉じましたが、それにも拘わらずある種の創造的「超新星」“Supernova”として、偉大な全ての交響曲、ピアノ・ヴァイオリン・ファゴット・クラリネット・ホルンのための協奏曲、室内楽、そして膨大な数の並外れたオペラ作品を生み出したのであります。

これらのオペラ作品の中では、主人公達はイタリアの古い舞台様式である“Commedia dell’arte”に登場するようなstereotypeではなく、初めて本当の生きた人間として性格づけられています。フランス革命とその挑発的な知らせによって変化させられた世の中で、私達観客は、希望と恐怖、大きな期待と大きな誤り、そして信念・罪・責任などを共に感じながら、愛し合い、憎み合う人々を舞台上に見る事になります。そこでは人間性は、社会的地位とか性(gender)とか宗教などとは関係がないのです。すべての男も女も人間的存在として見なされるべきであり、否定される事の出来ない固有の権利であります。
そして、これこそが同時に宮本亜門「魔笛」の中心的メッセージなのです。

しかしながら、皆さんが今日ご覧になるモーツァルトの最も有名なオペラとその演出について詳しく取り上げる前に、SalzburgとWien に挟まれたLinz市とその立ち位置について、もう一度話しを戻す事に致しましょう。
Salzburgは王侯君主と司教の都市でありましたし、Wienはハプスブルク家の二重君主制の強大な中心地でした。

ではLinzはどうでしょうか?
Linzは、鉄工業の産業地としては有名でしたが、長い間それらの都市に比べてより小さな都市としてしか認識されていませんでした。
しかし1980年台になって、Linz をSalzburgとWienの中間地点の第3の文化拠点とするという政策が立案され、その目的遂行のために、壮観なほどの大きく新しい文化施設が次々と建てられました。
新コンサートホール、近現代美術の為の新博物館、世界的にユニークなデジタル・アートとニュー・メディアのためのArs Electronica Centreアルス・エレクトロニカ・センター、そして2013年にはLinz州立劇場の音楽劇場が新築を見ました。これは、世界的に舞台技術的な可能性において突出した、しかも一番若いオペラハウスと言えましょう。
LinzはSalzburgやWienのような伝統の都市ではなく、(技術)革新の都市であり、とりわけ同時代的傾向や新しい道筋と見方の為に、人類と生命の未来について如何に評価するかの大きな創造的能力を、その間に発展させました。

全く首尾一貫したこの理由によって、Linz版「魔笛」は、宮本亜門氏演出(演出助手:菅尾友)、Boris Kudličkaボリス-クドリチカ (Bühnenbild舞台装置)、太田雅公(Kostüme衣装)、Bartek Maciasバルテック・マシアス(Video映像)ら諸氏の手に委ね、モーツァルトの偉大な作品「魔笛」を、「我々の時代の人間性と人間存在」という、全く今日的な切り口でお届けします。Linzでは2013年に、そして今2015年に、ここ東京で!


モーツァルトの《魔笛》は、辻褄の合わない筋書きで有名であります。
物語は三つの次元で語られます。全体の結果には強い統一感はなく、むしろ様々のスタイルとアイデアによる、現代的パッチワークとも言えます。

◆第一の次元は、Wienの郊外の小さな劇場で市井の庶民達の為に提供された大げさな芝居がかったコメディ、いわば「魔法オペラ」と呼ばれるもの。

◆第二の次元はモーツァルト自身(と彼の父親)によって霊感を受けた、Freemason(Freimaurer)に関連づけられます。それは神秘・秘教劇として、フランス革命の理想とその啓蒙思想を社会に広めようと試みる宗教的、哲学的な運動として。

◆第三の次元は、文学のジャンルをその根源に持つ物です。「魔笛」は、喩えて言うならゲーテW. Goetheの“Wilhelm Meister”「ウィルヘルム・マイスター」も、その中で英雄が人生を通して人生の為に学ぶ物語という「Erziehungsroman教養小説」の一種として。


                                       (続く)
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2015/7/20  0:09

投稿者:『魔笛』大好き

オペラシアターこんにゃく座「魔法の笛」も買いました!俳優座劇場の至近距離でしかも林光日本語上演を聴けるのはとっても楽しみです。
プレトークでは、多田羅さんが説明しながら美声で一節、歌ってくださったのも感激でした。


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