「SUPER AGRI F1TEAMの面白・アロウズ/TWR繋がり」
F1
今日は久々のF1記事で、長文です。
スーパーアグリF1チームについてです。
このチーム、ついに買収されてしまいましたが、
その関係者の面子を眺めてみると、
これは、最初から仕組まれていた流れで、
それがちょっと早まったくらいなんじゃないか?
という見方ができます。
僕の中ではものすごく腑に落ちる感じなのですが、それがここで説明しきれるかは、、、。
チーム代表
鈴木亜久里
マネージング・ディレクター
ダニエーレ・オーデット
テクニカル・ディレクター
マーク・プレストン
マグマグループ代表
マーティン・リーチ
マグマグループ傘下企業
スーパーアグリF1チーム(2008年3月)
UltraMotive (2006年11月)
→前身はMEL(メナード・エンジニアリング)、その前身はTWR(アロウズ)
これら、全て
アロウズ(
TWR)に繋がる。
って感じですか。
みんな、あの
リーフィールドの工場の関係者ですよ。
少なくともジャッキー・オリバーやアラン・ジェンキンスといったアロウズの古参の人たちについては、アグリさんは良く思ってなかったと思います。当時のインタビュー記事などを読む限り、相当差別的な扱いを受けていたと感じられたし、アロウズでの最後の頃は散々チームに文句言ってましたよね。だから、アロウズにはあまり良い思い出はないと思うのですが、声をかけたのがオーデット氏だったので、メナードつながり、というかTWR繋がりでプレストン氏に行き着いたのでしょう。
プレストン氏が、スーパーアグリの立上げ前に、自らのF1チーム立上げのために活動していたという話がありますが、そこで集めていたメンバーは元アロウズや元TWRのスタッフでした。そして、そのメンバーはそのままスーパーアグリに関わっています。
自らF1チームを立ち上げようとしていた人ですから、最終的には独立したい、あるいはチームを運営したいと思っていたとしても不思議はありません。アグリさんもそのことは理解していた可能性は高いです。というのも、アグリさん自身、50歳過ぎてまではやらないなんてことを言ってるようなので(ネット上で見た話)、これを信じれば、ですが。
ただ、資金繰りが上手くいかなかったために、その期限は予定より短くなり(チーム代表にいつまでいられるか不明だし)、買収されるしか道がなくなってしまった。けれど、そこはただでは起きないと言うべきか、なぜか買い手として上手くリーフィールド関係者が引っ張り出されてきたわけです。
というよりも、スーパーアグリの支援、もしくは買収目的のために、関係者の誰かが2006年の段階でリーチ氏にMELの買収を任せていたという見方の方が、ストーリーとしては面白いですね。
ここまでのところ、メンバーがアロウズ(TWR)関係者ゆえか、パクリ疑惑(FA1(1978)、SA07(2007))にチーム買収(フットワーク(1991)、TWR(1996)、マグマグループ(2008))というDNAも継承しているというか、因縁というか、怨念というか。。。
また、アグリさんをチームから追い出そうとしていれば、やっぱりニックきアロウズなのか、という気もしますし、複雑です。
マネージング・ディレクターのオーデット氏は、アグリさんとの関係はローラ・ランボルギーニで参戦したときに始まっています。
オーデット氏は、1976-77年はフェラーリのチームマネジャーであり、その後ランボルギーニのレース部門の代表(1987-95)、アロウズのマネージングディレクター(TWR副社長が主であり、リジェの仕事もしてたかな?)、ルノー、MEL副社長(出戻り?)、という経歴を持っています。彼は自分ではチームを持たなかったものの、F1での経験は豊富であり、アグリさんが頼りにしたのも当然と言えるでしょう。
そして、スーパーアグリを立ち上げるのに集めたメンバーが元アロウズだったというのも、プレストン氏のチームとは別に、リーフィールドのMELのスタッフを雇ったからでしょう。MELもIRLシャシーの設計等々をしてた時期もありますが、短命に終わっています。その後、2006年にマグマグループに買収されている状況を見ても、2005年の時点ではIRLの仕事もなくなり、早晩スタッフもリストラされる運命にあったと見ることができ、時期的にはF1チームの話は彼らにとって渡りに船だったとも見ることができます。
マーク・プレストン氏は、1996年から2002年のTWR倒産まで、アロウズのエンジニアから、最終的にはR&Dの責任者にまでなった人物。その後の2年間はマクラーレンでもプリンシパル・デザイナーとして働いていますが、このときはフリーランス的な雇用形態だったという噂があります。F1での一般的な雇用形態を知りませんが。また、スーパーアグリの立上げ前にはMBAの勉強もしているというあたりは、野心的な人かもしれません。
マーティン・リーチ氏は、我らが?マツダのR&D本部長であったことで日本のクルマ好きには有名かもしれません。最新のロータリーエンジンを載せた継ぎ接ぎのロードスターに乗ったことから、ロータリーエンジン復活への道を作ったことは有名になりましたが、787Bに乗ってクラッシュした話も、武勇伝として有名でしょうか。ともあれ、彼はフォードを去り、フィアットグループからも去った後、マグマグループを立ち上げています。そして、MELを買収し、旧アロウズチームとの関係ができます。
リーチ氏とスーパーアグリがどのような経緯で接点を持ったのかは、関係者にしか分からないし、今後、本当のことが表向きに語られるかどうかは不明です。しかし、こうまでリーフィールド周りで繋がると、何か買収へのシナリオがあったんじゃないかと思わざるを得ません。
日本人の視点ではなく、エンジニアの視点でこのことを見た場合、それはそれで、そういうシナリオめいたものがあったとしても、応援したいという気持ちもあります。なぜなら、ここまでの展開には、お金がらみやビジネスの雰囲気よりも、リーフィールドを中心としたエンジニアやF1好きたちの情熱の方を強く感じるからです。
1980年代から1990年代のTWRと言えば、強いレース屋の代名詞的存在だったと思います。もちろん、レーシングをビジネスとしていましたが、それは今のようなチームを転売するというようなビジネスではなく、きっちりとレースで勝つということを主としたビジネスだったと思います。WSPCやWSC、ルマンでのタイトルなど数多くありますね。ただ、F1村ではその手法が良くなかったのか合わなかったのか、買収したアロウズにも次第にスポンサーが付かなくなり、TWRもろとも倒産に追い込まれましたが。
しかし、TWRはレーシングビジネスでは必須の優秀なエンジニアを育てていたという面では評価されていると思います。そして、今のスーパーアグリが、そのTWRがまいた種(という表現は違うかもしれないけど)によって支えられているものであるなら、日本のチームでなくなったとしても、その情熱を大切にして上を目指していって欲しいなと思うわけです。
ともあれ、ようやくバックアップを得たわけです。
まだ詳細は不明ですが、昨年のような開発ストップもなく、エンジニアたちの力が最大限発揮でき、そしてドライバーたちが最高の成績を残せる環境になることを祈ります。

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