新潟市は、合併・政令市指定に向けて、本年3000万円の予算で財団法人「地方自治研究機構」に調査・研究を委託することになっています。この「地方自治研究機構」というのは、国の補助金が出ている外郭団体で、総務省の官僚出身の天下りが理事長をやっています。
政府に政令市の指定をお願いする自治体は必ずここに調査事業を委託することになっているようで、歪んだ関係が見え見えです。静岡市は政令市指定を申請するまで、計3度にわたり同様の調査研究を同じ財団に委託しているのです。
そこで僕が所属する総務常任委員会では、僕の提案で、この委託事業の発注仕様書(企画書)の説明を求めることになりました。
担当課の説明の後、僕は以下のように問題点を指摘しました。
1)仕様書がアバウト
まず、3000万円の事業の仕様書であるにも関わらず、A4裏表1枚で抽象的な内容しか書かれておらず、僕自身、かつて大学で医療関係のシステムや機器の仕様書作成に関わってきた経験からすれば、信じられないほどのものです。
例えば同額程度の機器や工事の仕様書でも、「材料は○○規格の最新のものを使用すること」「○○の強度は○○以上となること」「請負業者の役割分担・責任体制等を明記した書類を提出すること」等、事細かに設定し、それによって事業や製品の品質を確保しようとしています。数千万の機器でも厚さ数センチの仕様書ができるほどです。
たとえ調査研究であったとしても、使用するデータの信頼性の確保、調査研究の責任体制とその役割分担、中間報告の時期や協議体制および協議事項の確認反映方法、等々、相手の仕事の質の水準を確保するためにできるだけ可能な限り綿密に作成するのが筋というものです。
まずはこの点について指摘し、これだけの貴重な税金を使うのにおかしいではないか、と質しました。
担当課は「実は2500万円まで落とさせました」と弁明しましたが、そういうふうに簡単に数百万円も上がったり下がったりすること自体、こうした委託研究の値段があってないようないいかげんな証拠であり、だからこそ綿密な仕様書が必要なのだ、とあらためて指摘しました。
2)昨年度の調査で、重要な事実が!
実は、新潟市は昨年度予算(つまり、僕が議員になる前に決まった予算)でも、同じ財団に既に1800万円の調査事業を委託しています。その昨年度の報告書を分析してみました。
その資料を見ると、今後新潟市が合併し大きくなっていく場合の人口フレームの予測という項目があり、現在の枠組みで合併したとして、仙台市と同じような政策的・経済的インパクトがあったという過程でシュミレーションして、人口は2015年程をピークに、80万余となります。
しかし、一方、合併をしない場合でそれぞれの市町村の人口推移の単純合計を見ても、やはり同じ頃をピークに79万余。実に、仙台市のようなインパクトがあってもわずか1万余しか増えない、と厳密に分析されているのです。
ところが、新潟市は「合併すれば」「政令市になれば」、拠点性が高まりどんどん人口も増える、100万人も夢ではない、というようなことを公言し、ばら色の未来を描いています。でも、それにはなんの科学的根拠も無いことが、他ならぬこの委託調査事業で皮肉にも明らかになっているのです。
しかし、政令市に向けたパンフレットなどでは、こういう「都合の悪い」データは一切使用せず、都合のいいものばかり取り出しているといわざるを得ないものとなっています。これも問題ですね。
3)追及し始めたら、さらに予想外の問題で大紛糾!
さらにこの昨年の報告書と、その発注仕様書を詳細に見比べると、もともと3つの重要課題で3本の報告書が作成されているはずなのに、われわれ議員に配布・説明されたのは2冊の報告書だけで、3本目の「政令市指定の先行事例の研究」報告書が無かったことがわかりました。一昨年に作成された仕様書と比較するような奴は僕くらいなので、先方も甘く見ていたのかもしれません。
僕はてっきり、実はこの3冊目の報告書がまだできていなかったのでは、と思って追及し始めたのですが、よくよく聞くと、「先行市では県との事務委譲の協議に難航した例などがあり、そうしたことがありのままに書いてあるので、これをオープンにするといろいろ差し障りがあるので・・」との説明。
これには保守系各会派も納得せず、周りの委員がみなヒートアップ。「なぜ出せないのだ」「議会軽視だ」「何が情報公開日本一だ!」「ガラス張りの市政なんてメッキがはがれてるぞ」と大紛糾。火をつけてしまった僕もびっくりするくらいの大騒ぎになりました。
僕は「そういう資料こそ公開し、さまざまな困難な課題の解決のための議論こそ大切なのではないか」と主張し、結局、担当課も皆の剣幕に負けてついに公開が決まりました。
増刷に時間がかかるとのことで当日夕方配布されたその資料は、すでに配られた2冊の報告書の何冊分もの厚さの大量のもの。一同「おいおいこっちが本体じゃねえのか・・」。僕から追及されなければ、こんな分厚い重要な資料が、その存在すら明らかにされなかったわけです。
「合併・政令市に向けて夢を語り、市民に希望を与えながら、一切の苦労を引き受けようという担当課のお優しい心遣いはありがたいが、今回の巻との新たな合併などについいても、公にするとはばかれるような資料や冷厳なデータ分析の結果が広く市民に明らかにされることなく、このような形で議論や手続が進んでいくのは極めて遺憾」と訴えました。

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