第2弾として、10-11日に行なわれた企画の報告です。
↑11日におこなわれた市民グループ独自デモ
■さまざまな関連企画
第1弾で報告したように、新潟で行なわれた労相サミットに向け、児童労働や女性の地位に関する企画、市民映画館における「労働」をキーワードにした映画の上映など、さまざまな取り組みがおこなわれました。
開催前日の5月10日には連合新潟地協のデモが行なわれ、400名が参加。この集会では、不安定雇用の当事者や女性労働者のユニオンなどの参加の他、連合の企画としてはおそらく初めて、部落開放同盟や民団などにも呼びかけられ、就職差別や在日外国人の雇用問題について訴えました。また、集会で発言した地域総合研究所の江口昌樹氏は、「ILOが労働分野で守るべき中核的基準としている8条約のうち、日本は『強制労働廃止』と『雇用・職業の差別待遇』に関する2条約に批准しておらず、日本は労働相会合の議長国を務めるような『先進国』といえるのか」と鋭く批判しました。
10日午後には連合本部と連合新潟主催で弁護士の中野麻美氏や経済評論家の森永卓郎氏なども参加してシンポジウムが開催。中野弁護士は、自身が担当してきたさまざまな深刻なケースを報告し、「『労働は商品ではない』という言い方がよくされるが、生きていくために、ストックもきかず、いくらでも安く売らなければならず、今や労働は商品以下になっている」と指摘。森永氏はマスコミでの出演を通して直接間接に知った「経済評論家」や「文化人」「経営者」、あるいは官僚たちの「厳しい労働条件で人がやめても、いくらでも取替えがきく」「より厳しい状況に置けば怠惰な若者も働くようになる」といった信じがたい発言やその本音を紹介してくれました。
■ITUC書記長、空気を変える!
集会では海外ゲストとして国際労働組合総連合(ITUC)のガイ・ライダー書記長なども参加。労働問題の発言だけでなく、興味深かったのは質疑でのひとコマ。
参加者のひとりから「憲法9条やイラク戦争についてどう考えているか」との質問がありました。会場や主催者の雰囲気としては「オイオイ、労働問題の企画なのに場違いな。KYかよ・・」というような「空気」がありありだったのですが、長身の氏は自信を持って会場に語りかけながら、この「空気」を変えました。
氏が書記長を務めるITUCは国際自由労連(「左翼」からはよく批判される)をひとつの母体とする最大の国際労働組織ですが、この質問に対し、「ITUCはいかなる紛争も武力で解決することに反対しているし、イラク戦争には開戦当初から反対している」と答え、「例えばパレスチナ紛争では、イスラエルとパレスチナ双方の労働組合の連携を組織したり、イラク戦争ではイラクの労働組合活動家とも連携して活動してきたが、彼らのうち何人かはテロにあって死亡してしまった。大変厳しい状況の中でも、私たちは、現地の労働組合と連携して、言葉だけでなく具体的な活動を展開している」と力強く発言したのです。
「おいおい」という雰囲気や空気はガラッと変わりました。日本の連合の幹部で、このようにリアルに、力強く、労働と平和の問題をトータルに語れる人間はいるだろうかと感じるほどの、期待以上の発言でした。国際自由労連を無批判に賞賛することは新左翼諸氏からは批判されるかもしれませんが、正直言って、プチ感動しました。
■徒手空拳のデモ、サミットに拳を上げる!
翌11日午前はサミット会場の近くの公園で集会、そして厳戒態勢の中、会場近くまでデモ行進と街宣が行なわれました。郵政ユニオンや県職労の非常勤分会の女性たちも参加した他、G8サミットを問う連絡会のMLや掲示板などを通して、ATTACやフリーター全般労組などをはじめ、東京、富山、長野、愛知などからも参加者が駆けつけました。フリーター全般労組の青年は、ガソリンスタンドで労働条件の改善を求めて組合を作ったとたん解雇されたことを報告し、「世界をつくるのは一握りの金持ちじゃない。人間を使い捨てする社会を変えるため声を上げよう」と訴えました。
参加者は「僕らはみんな生きている。派遣だって非正規だって生きている」と童謡の替え歌を歌いながら、「G8こそ世界の貧困と戦争の元凶」「人間を使い捨てにするな」と訴えてデモ行進。途中、牛丼チェーン店やコーヒーショップの前で「す○家の労働者がんばれ」、「スター○ック○は時給をあげろ」などとシュピレヒコールして、アルバイトの若い店員たちが中から手を振ってくれました。
この11日の市民独自企画はほぼ全てのテレビ・新聞から取材を受け、好意的に報道されました。立派な会場で開催されるサミットと、厳戒態勢のヘリコプターが空で舞う中、徒手空拳とも言える、フリーターや失業者を含む市民のデモ。象徴的な風景でした。
「違法派遣が社会問題になりながら、政府は日雇い派遣禁止すら打ち出せない。残業代の割り増し法案も国会でたなざらしが続く。きょうの閣僚級会合で、唯一の大臣参加国になった日本は、世界に向け何を訴えるのか。一言でいい。新潟で童謡を歌った彼らの胸に響くメッセージが聞きたい。」と地元紙新潟日報のコラムは書いてくれました。
協同型、政策提案型の取り組みだけでなく、小規模ながら切実な課題を抱えて集まった人々と市民による有志企画は、「歓迎一色」に染まりつつあった新潟の風景に、それとは異なる、批判的・対抗的な意思を示すことができたと言えます。全国から駆けつけてくれた人たちの力や、その背景となったネットワークに感謝します。ありがとうございました。

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