中山と市民連合などが提案に関わり、議会運営員会で検討されてきた「ヘイトスピーチ等を規制する法整備を求める意見書」が保守系のひとつの会派を除く賛成多数で可決しました。
文面は下記の通り。大臣名などの入った正式な文書は数日以内に新潟市議会のHPにアップされる予定です。
===(以下可決された意見書)
ヘイトスピーチ等を規制する法整備を求める意見書
最近,特定の国や民族あるいは人種への差別や憎悪をあおる言動,いわゆるヘイトスピーチが行われ,社会問題化しています。
昨年12月,このヘイトスピーチ問題をめぐる裁判で,最高裁判所は,その言動が人種差別撤廃条約に言う人種差別に該当すると認定するとともに,その行為が表現の自由の範囲を超えているとして差しとめを命じた大阪高裁判決を確定させました。
また,昨年7月,国連自由権規約委員会は,あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)上の人種差別に該当する差別的言動の広がりに懸念を示し,締約国である日本に対し,このような差別的言動に対処する措置をとるべきとの勧告をしました。国連人種差別撤廃委員会も,人種及びマイノリティーへの差別的な表明や暴力に断固として取り組むことや,ヘイトスピーチに対しては適切な手段をとること,そうした行為に責任のある個人,団体を訴追したり,ヘイトスピーチをする政治家,公人に制裁を科すことなどを政府に勧告しています。
国並びに市においては,これまでも外国人に対する差別や偏見をなくす取り組みを重ねてきたものですが,これらの国際的な勧告を重く受けとめ,より踏み込んだ対応に取り組む必要があります。ヘイトスピーチを放置することは,国際社会における我が国への信頼を失うことにもつながりかねません。
そこで本議会は,国会及び政府に対し,表現の自由など、憲法で保障されている基本的人権の擁護を前提に、ヘイトスピーチを含む差別を規制する新たな法整備を速やかに行うことを求めるものです。
以上,地方自治法第99条の規定により意見書を提出します。
平成27年3月20日
新潟市議会議長
志田常佳
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
法務大臣
あて
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中山は提案議員の一人として賛成討論を行ないました。
<以下賛成討論原稿>
国連の人種差別撤廃委員会などは、日本政府に対し、ヘイトスピーチ問題に「毅然と対処」し、法律で規制するよう勧告した。これに対し、法務省などは「表現の自由を侵害する」という理由から、ヘイトスピーチ規制に消極的な見解を取っている。
しかし、問われているのは「表現の自由」問題ではなく、差別そのものだ。いわゆる「ヘイトスピーチ」は、民族・人種・国籍差別の一形態であり、これを「表現」の一形態として捉えること自体、論点がずれている。ヘイトスピーチを含む、あらゆる差別的な憎悪犯罪、いわゆる「ヘイトクライム」は、国際自由権規約、マイノリティ権利宣言、人種差別撤廃条約などで禁止されているばかりでなく、国際自由権規約第20条2項において具体的に「差別、敵意又は暴力の扇動となる国民的、人種的又は宗教的憎悪の唱道は、法律で禁止する」とし、犯罪として処罰することを各国に求めている。
国際法や世界各国の国内法でも規制されているヘイトスピーチやヘイトクライムが野放しにされている日本社会の状態は、世界の「常識」からかけ離れ、国際社会の一員として恥ずべきものと言える。
ここで思い起こすべきエピソードがある。昨年3月と8月、サッカーJリーグで外国人選手やサポーターに対する差別的挑発事件が発生した。法的な処罰は免れたが、当該チームやJリーグは事態を重く見て、厳しい処分や制裁を課した。あのような差別がスポーツ界で放置されれば、憎悪が反発とさらなる憎悪を増幅させ、殺伐とした状況となったであろうことを想像すれば、こうした規制や対応の必要性が明確であることを理解できる。スポーツ界での差別行為に対する毅然とした対応が、彼らが掲げる「フェアプレー・フェアサポート」の精神を実現する基盤となっているのと同様、差別的な憎悪犯罪に対する社会的規制は、「表現の自由」を委縮させるのではなく、むしろそれとは別の、豊かな表現や議論と文化を育む前提条件となると考える。その意味で、政府もJリーグを見習うべきだし、スポーツ振興議員連盟に多数の議員が参加し、アルビレックスの元プレーヤーも議員として擁する本議会としても、この一件は注目すべき重要な参考例だと言える。
また、在日コリアンが多い東京の新大久保や大阪市の鶴橋などでは、多くの市民がヘイトスピーチに対抗するための、さまざまな文化的な活動や運動を繰り広げている。こうした市民の運動こそ、社会に「反差別」を力強く根づかせることにつながるのであり、その意味でも、市民から負託を受けた議会が、本意見書を可決することによって、新潟において先頭を切って声を上げることの意義は大きい。
なお、意外と思われる議員や執行部の方もおられると思うが、無所属で同じ部屋の深谷議員は、寛容の精神、日本の伝統を重んずる右翼本流のひとりとして、敵対する国家を憎んでも、その市民を憎むわけではなく、むしろ人種差別やヘイトスピーチなどに強く反対しており、この意見書に積極的に賛成することも、ここであえて紹介しておきたい。
あらゆる差別に反対し、多様性を大切にする市民による社会構築に向けて、自治体議会としてもこれからも一層努力する必要があることを訴えて、賛成討論とする。

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