先日、植物写真の提供依頼がありまして、古いデータを調べていた時、気になっていた海岸の花を思い出して取り出してみました。
ここのところ、いろいろと忙しくて、過去の写真を振り返る機会がほとんどありませんでした。
一応、平成12年から今年までの21年間に撮影した自然写真や主要写真は、ハードディスクに、年度ごと月ごとに整理して保管しています。今となっては貴重なネイチャー・アーカイブとなりました。
最近になって、偶然ですが、海岸植物のウンランの花の写真を目にする機会がありましたが、その折に目にした花姿が、平成21年8月にいわき市の新舞子海岸で出会った花と同じことに気が付きました。
今回、改めてその写真フォルダを開いて確かめたところ、まさにウンランの花でした。
思い出しますと、あの時は、新舞子海岸を歩いていて、キンギョソウの花に似た黄色と橙色の花の群れを見つけたのですが、何の花か分からず、とりあえず写真撮影しておいたのです。その後、その花のことを調べないまま今日に至った訳ですが、改めて当時の記録を眺めますと、新舞子海岸にはウンランの群落が存在していたのですね。
その後の東日本大震災の大津波でここの海岸は被害を受け、ウンランが自生していたあたりも、かなり破壊されたようです。
したがって、ここに改めて当時撮影した写真を紹介し、震災前の新舞子海岸植生の一端を公開したいと思います。
あれから11年たちますが、当時の写真を一覧いたしますと、途切れ途切れながら記憶がよみがえって来ました。
今回は、偶然、写真提供依頼をきっかけに以前のデータを見ることができましたが、古いデータの再確認は必要だと思いました。
ここが、ウンランが群生していた新舞子海岸の場所です。
海岸の南側の風景です。
2011年3月11日の大津波によって、かなり破壊され、現在は復旧工事も終わり、風景も一変していますね。
美しいウンランの花が満開で、ちょうど見頃だったようです。
ウンランの花は、仮面状花と呼ばれ、基本は上下二唇ですが、下唇の基部が大きく膨れて喉をふさぎ、橙色をしています。例えは変ですが、扁桃腺炎にかかった喉みたいな花です。
花冠の基部には距が認められます。
海岸に生えて、花がランに似ている所から海蘭と名付けられたようです。
本当に美しい、印象的な花姿ですね。
11年前のことになりましたが、あの時ほったらかしにしないで、きちんと調べておけばよかったと思いました。
茎は、このように砂浜を匍匐するように延びます。
すごい生命力と繁殖力で、堤防の石垣の隙間からも繁茂していました。
こうやって見ますと、本当に美しい花ですね。
新舞子海岸に群れて自生していたのです。
貴重な植生でしたね。
葉は対生または輪生です。
海岸植物なので、葉は多肉植物に似て肉厚です。
とても貴重な植生。
これだけ繁殖力が旺盛でしたので、津波後もどこかで復活しているのではと期待しています。
花の時期は8月頃なので、いつかは確認してみたいですね。
ハマニガナも咲いていました。
黄色く美しい花。
葉の形が独特ですね。
これは、オカヒジキですね。
一応、食べられるみたいですよ。
ハマエンドウです。
ケカモノハシの雌性期の穂。
白い柱頭が目立つ、独特の姿です。
穂の中央に、長い割れ目のような溝が見えます。
ケカモノハシの穂は、小穂をつける花軸が2本密着して付いているのです。
同じく、ケカモノハシの雄性期の穂です。
茶色い葯がぶら下がっているのが見えますね。
平成19年9月にここで開催された福島県植物研究会の観察会の折に、ケカモノハシのことを教えていただいたので、これがそうかと思い出しました。
砂浜は、ケカモノハシの群落でもありました。
ハマボウフウです。
花は果実となっていました。
分果が密着して、独特な姿になっています。
残っていたハマボウフウの花もありました。
ハマナスの赤い実。
咲き残っていた花を見ることができました。
ハマゴウの花が見頃。
震災前だったので、群落は素晴らしかったです。
今回、11年前の写真を確認して、改めて震災前の新舞子海岸植生の素晴らしさが実感できました。
あの大津波から復旧工事を経て、少しでも多くの種が復活していることを願うばかりですね。
とりあえず、震災前の植生の一部について紹介いたしました。