去る6月28日、29日に2014ヤングセミナーと第6回定期総会を熊本で開催しました。熊本経済連の「グリーンセンターくまもと」の見学などを通じて農業や職場を取り巻く課題に思いをはせながらや、九州の仲間からの実践報告や討論から青年部活動の貴重な教訓を学びあいました。
セミナー後に開催した第6回総会では、総括・方針と新年度の役員を決定して、今年度のさらなる奮闘を決意しました。
以下、決定した総括と方針です。
2013年度活動総括・2014年度活動方針
(1)私たちを取り巻く状況
この1年間、私たちの生活や職場を取り巻く状況はさらに大きく変化し、今年も激動の情勢のなかで総会を迎えました。これから求められる青年部活動を考えるにあたって、はじめに私たちの置かれている状態を確認しあいたいと思います。
??私たちの職場と、若者の雇用や働き方について
この間、私たちの職場では青年層の離職が大きな問題になっています。中には職員数400名強のうち新入職員を毎年30??40人も採らざるを得ないという職場もあり、離職した仲間はもちろんのこと、残された仲間にとっても大変な問題です。
せっかく、農協・関連団体の職場に希望を持って働き始めた若者が、間も無くして職場を去ってしまうことは、職場にとっても労働組合・青年部にとっても大きな損失であり、「働き続けられる職場」を目指してきた全農協労連青年部にとって最大の課題の一つです。そういう中で、全農協労連青年部は、労働条件とともに「働きがい・やりがい」という角度からも職場を問い直し、全国の仲間に発信して、世代を越えて問題意識を喚起してきました。
さて、若者の雇用や労働全体をめぐる状況はどうなっているのでしょうか。この間、大きな社会問題として取り上げられたのが、若者を使い捨てにする企業、いわゆる「ブラック企業」の問題です。ブラック企業は、必ずしも経営の悪化によって違法を余儀なくされているわけではありません。東証一部上場企業の売り上げ上位100社のうち、約70%が、厚生労働省が示す過労死ライン(月80時間)を超える残業をさせており、こういった働かせ方は、あらゆる企業や産業に蔓延し、仕事によって命を奪われた20代はこの6年で5倍増となっています。
インターネットの普及も背景にして、多様に行われた違法な労働環境の告発は、青年層から発信されたと言われています。これによって、社会全体の関心が高まり、厚生労働省などを具体的な対策に乗り出させたことは重要な変化でした。
ブラック企業の指標をみると、私たちの職場にも「残業代が出ない」、「若者の離職率の高さ」、「『自爆契約』がある」など、多くの点が当てはまり、他人事ではありません。これらの問題の解決にむけて、まさに労働組合の出番です。しかし、今の不景気下で「自分はまだまし」と言って、これらの違法を容認しかねない状況があります。
一方で、職場に労働組合がない若者が「ローカルユニオン」に加入して、解雇撤回や未払い残業代を払わせるたたかいに立ちあがっている事例も増えています。私たちは職場に労働組合があることを大切にし、若者から声をあげて労働組合をしっかり機能させましょう。これは、自分たちが働き続ける上でも大切ですし、社会的にも労働組合の頑張りが求められています。
他方、労働法の解釈をゆがめて経営者に都合のよい主張を入れ知恵したり、団体交渉に乗り出してデタラメな主張をする弁護士や社会保険労務士、いわゆる「ブラック士業」も増加しています。これらは、インターネット上で誤った法解釈を示している場合もあります。また、政府は労働法制を変えて、「残業代ゼロ」、「一生涯派遣」などを合法化しようとしており、裁判所や労働委員会から、それらの労働法制改悪を先取りするような、不当な判決・命令が出されはじめていることも重大な問題です。
今、マスコミの情報やインターネットで調べたような法解釈や判例をうのみにせず、きちんと労働組合・青年部として学習をし、自分たちの置かれている状況とともに問題点を確認しあうことがこれまで以上に重要になっています。
??農業、農協・関連団体に対する「解体攻撃」
次に、私たちの職域である「農業」とそれを取り巻く状況です。いま、日本の農業とそれに関連する制度・団体に対して、大きな圧力がかけられています。規制改革会議が打ち出し、政府方針にも反映された、農協や農業委員会の解体という動きです。これは、農協を解体することそのものが「目的」ではなく、大企業が地域や農業に進出するために、障害になるものは一掃しようという「手段」の一端です。
この背景にあるのは、1980年代から広まった、規制緩和・民営化を軸として大企業の経営を最優先する「小さな政府論」=新自由主義と呼ばれる考え方・政策です。これは、日本では小泉純一郎元首相の時代に「構造改革」という名前ですすめられ、貧困と格差が大きく拡大するという問題を引き起こしました。また、世界的には、金融をカジノ的な投機の場にさせ「リーマンショック」というバブル崩壊を引き起こして、世界中に不況を飛び火させるという問題を発生させ、あまりにも大企業や投資家を優先・優遇する、行きすぎた新自由主義は、市民の生活や、経済そのものを破綻させてしまうことが分かってきました。
これらの動きのなかで、この間、国連は「国際協同組合年」や「国際家族農業年」などを定め、大企業中心でない社会の構築が世界的に模索されてきました。世界の貧困や食料危機を解決するカギとして、私たちの携わる地域農業や協同組合が見直されています。
ところが、これらの流れに反して安倍政権は「世界で一番企業が活動しやすい国」をつくるために、新自由主義政策を復活させ、あらゆる規制緩和を行う方針を定めました。とりわけ「雇用」や、営利追求が馴染まないとされていた「医療」、「教育」、「農業」などの分野を「岩盤規制」と名付け、財界人で組織した諮問機関やマスコミを総動員して、現行の制度や団体を「既得権」だと批判し、解体しようとしています。
しかし、多国籍大企業が部分的に農業や地域の市場に進出しても、協同組合や地場産業のような地域的責任を果たすことはできず、儲からなければ撤退して、農村を衰退させることは明らかです。
5月14日には、規制改革会議がTPP参加を前提に農協組織の解体・再編を急速にせまる提言を提出し、自民党の改革案、規制改革会議の第2次答申を踏まえて、政府は6月24日に「骨太方針」として様々な規制緩和と一体に方針を示しました。
こうした協同組合を否定する規制改革会議の提案は、国際協同組合同盟(ICA)の会長も批判しています。協同組合や家族的な農業が世界的に見直される一方、それと逆行する日本の政治・政策が根本的に転換されない限り、今後も私たちの職場や地域はいっそう政府や大企業の激しい攻撃・介入を受けるでしょう。
一方、協同組合や地域農業の発展と逆行し、TPP参加を前提にした政府・財界の政策に飲み込まれるような考え方や動きが、農協・関連団体の内部や労働者のなかにも生まれていることは非常に大きな問題です。
これらの動きと組織の内外でたたかいながら、青年部が掲げてきた「働き続けられる職場」をつくることはまさに正念場となっています。
(2)2013年度の活動総括について
??粘り強く行われる各地の活動をバックアップしてきた
これらの状況のなかで、各地の青年部は今年も様々な企画や学習会、交流会等に多彩に取り組んできました。また、TPP反対の宣伝行動をはじめ、職場の外にむけた「運動」が青年部から発信されてきたことも重要です。
いま、職場には様々な課題と困難が発生しており、私たち一人ひとりはますます分断されがちになっています。そんななか、横のつながりを強める青年部の活動が多彩な形で継続されてきたことは、労働組合の活性化や組織強化にとどまらず、職場や仕事のあり方、あるいは人間関係にとっても重要な意味を持つものでした。
それらの活動のなかでは、新たに様々な努力や工夫が生まれています。全農協労連青年部の発信してきた資料が活用されたり、全国のセミナーを通じて学んだ内容や、青年部どうしの交流によって生まれた“気づき”が各地で反映されていることは、大変うれしいことです。また、地本・単組・支部分会を問わず、各地の青年部の会議や学習会などに出向くオルグ活動を位置づけ、都度のテーマと合わせて全国的な取り組み事例や教訓も発信してきました。
全農協労連青年部が昨年6月に開催した2013ヤングセミナーでは、被災地の再生から学び、2月に開催した役員セミナーでは「ロジックツリー」を活用して、職場の具体的な問題をどう解決するか討論しました。それらの内容も、その後の地本や単組の取り組みに反映されています。
全農協労連青年部ニュースは、2013年度は13号??16号の4回発行しました。目指していた隔月1回のペースには届きませんでしたが、教訓として生かせるような取り組みや、具体的に役立つ学習を掲載するよう努力してきました。
??労働組合本体との連携を強める努力
またこの間、全農協労連青年部は、青年部のメンバーだけで活動を完結させずに、当該の労働組合とも連携をとって、青年部活動の役割や可能性を幅広い年代に知らせ、理解を広めていくことが重要だと訴えてきました。その実現にむけて、今年度から全農協労連の大会で青年部と女性部の特別代議員が設けられたことは大切な一歩でした。
2月に行われた全農協労連の臨時大会には、全農協労連青年部を代表して小木事務局次長が参加し、全農協労連青年部の活動と到達を報告しました。離職や自殺などの青年が置かれている深刻な状態を告発するとともに、労働組合の組織強化にとっても青年部が重要であることや、青年が自分達の現状を知り働いていくために知識を身につけることは、労働者としても人間としても必要なことだと指摘し、青年部活動への協力と共感を訴えました。
こうした発信を継続するなかで、各地で予算的な保障も含めて青年部の位置づけを高めてきた労働組合や、青年の自主性を重んじながらも、労働組合らしい運営がなされるように青年部への支援・指導を改めて位置づける労働組合が生まれてきたことは重要です。
これからも、世代や立場を越えて青年部活動の理解を深めながら、多様な発信によって労働組合の組織と運動を強化していくことが必要です。
??これまでの枠組みを超えた共同を広げて
また、全農協労連青年部は各地の青年部の活動経験から教訓を学んで、職場・産業を超えた青年労働者との共同も重視してきました。その中で、昨年10月20日に東京・明治公園で開催された「全国青年大集会」の実行委員会にも参加しました。この集会は、今回で8回目の開催となり、この間「最低賃金生活体験」や「ネットカフェ難民調査」などの様々な取り組みを通じて注目され、青年の雇用・貧困問題を社会問題へと押し上げてきた集会です。
今回の集会は、大雨のなかでしたが全体で1500名の青年が参加し、全農協労連青年部の仲間も岩手、千葉、東京、長野、愛媛から参加しました。マスコミにも大きく取り上げられた秋田書店やカフェ・ベローチェの争議当事者の青年の発言をはじめ、全国各地・各分野の青年のたたかいが報告され、「横につながって社会を変えよう」と確認しあいました。青年を取り巻く雇用・労働環境を考えるなかで、農協・関連団体の枠にとどまらず、連帯の輪を広げていくことはますます重要になっています。
??すべての活動に「3つの柱」を位置付けて
これらの活動全体のなかに、全農協労連青年部は昨年度に引き続き「3つの柱」を位置付けてきました。ひとつは「働きがいを考える活動」、もう一つは「東日本大震災の被災地への支援活動」、そして「農業問題・TPPなど仕事・生活・地域にかかわる学習や運動」です。
1)働きがいを考える活動
全農協労連青年部として、様々な学習や討論の際に「働きがい」を考え、問い直すことを一つのテーマに位置付けてきました。その一環として、昨年度に呼び掛けた「働きがい・やりがい“白書”アンケート」を集約し、この要約を広く発信して活用を呼びかけました。2010年度に調査・集約した「若者実態“黒書”アンケート」とあわせて、全国各地の学習会・討論などに生かしてもらっているところです。
青年の離職が多いという問題は、青年層にとどまらず労働組合や職場全体にとって最大の課題の一つです。この白書アンケートの結果を発表したことによって、「働きがいを考え、問い直す」という観点が、働き続けられる職場づくりの一つの重要なポイントとして注目を集めています。こういった労働組合の意識の変化や、新しい観点への“気付き”は、アンケートという形でしたが、青年が本音を語ることによって作り出されてきたということを、確認しあいたいと思います。
2)東日本大震災の被災地への支援活動
昨年に引き続き、被災した学校への支援に「ベルマーク」を集める活動、都度のセミナーでの支援の物販、被災地での取り組みを全国の仲間に呼び掛けることに取り組みました。近日中に第2回目の集計を行い、ベルマーク財団に送付します。
また、昨年の2013ヤングセミナーでは、宮城県の沿岸部の南部をめぐり、被災地域の現状の一端を学び、地域再生の取り組みを参加者で考えあいました。その中で、被災地支援にいち早く労働組合が取り組んだという経験から、労組・青年部活動の多様な役割と可能性を実感するとともに、地域に寄りそった支援のあり方を学習しました。
いまなお、被災者の生活と生業の再建は遅々として進まず、若者の人口流出や、震災関連死が増え続けるなど多くの課題がある一方、大防潮堤など住民本位でないハコモノ復興計画が進むなど、被災地にかかわる課題は多様です。そして、かつて求められたような直接的な援助・支援とは違った関わり方が求められています。
東日本大震災による被害と、その復興をめぐる課題は、日本社会のあり様を大きく問い直しました。この問題に心を寄せて継続的に関わることは、地域の未来を担う私たちとって、社会や政治のあり方を考える意味でも大切になっています。
3)農業問題・TPPなど仕事・生活・地域にかかわる学習や運動
私たちが働き続けられる職場を実現するためには、私たちの仕事が依拠している地域や農業の問題・TPPなどに関わる課題に取り組まざるをえません。全農協労連青年部は、そうした課題の学習や運動の重要性を呼び掛けてきました。
この間、とりわけTPPの課題で多彩な学習が行われ、TPPの影響だけではなく、その本質や背景が学ばれてきました。農協・関連団体の仕事として取り組むだけではなく、労働組合や青年部として取り組んだことで広く市民に伝えることができ、その結果、TPPはごく一部の多国籍企業の利益を拡大するだけで、99%の市民にとっては悪影響しかないということが少しずつ明らかになっています。その中で、広範な市民によるTPP反対運動が広がり、諸外国の運動とも連携してTPP妥結を何度も阻止することにつながりました。
一方、職場によってはTPP反対をはじめとした課題への関心が薄らいでいる状況も聞こえています。今、新たに浮上している「農協解体」の動きも含めて、職場の存亡にかかわるこれらの大問題について、青年部からも問題意識を高めて話題にしていくことが必要です。
(3)2014年度の活動方針について
??「3本の柱」を引き続き位置付けて、これまでにない青年の運動を
2012年度、2013年度の2年間の活動の柱とした、??「働きがいを考える活動」、??「東日本大震災の被災地への支援活動」、??「農業問題・TPPなど仕事・生活・地域にかかわる学習や運動」は、引き続き重要な課題ですので、活動の3つの柱として継続します。そのもとで、1年間の活動の具体化をはかります。
とりわけ、働きがいを考える活動は、世代を越えて関心を呼んでいるテーマです。これまでの調査活動や現状の発信にとどまらず、さらに踏み込んで具体的にどんな運動や提案ができるのか深めます。また、各地で生まれた経験や様々な意見を幅広い層に発信していきます。
また、??は昨今の農協解体攻撃のなかで、これまでにない規模の学習と運動をしなければ、職場そのものが無くなりかねないという課題です。いま、私たちの置かれている状況をかんがみ、各地の青年部がこれまでの枠を超えた活動に踏み出せるよう、各課題について間断のない情報発信と提案をしていきたいと思います。
??各地の青年部をつなぎ、活動に役立つ発信を
各地の青年部の頑張りが交流やニュースを通じて交流されることが、新しい活動を生み出す大きな力となっています。また、各単組・支部の活動や運営を学び合おうと、地本で青年部役員セミナーを準備しているところもあります。こういった前進や工夫を激励しながら、活動に役立つ提案や情報発信をおこないます。
これまでも国各地の取り組みや課題を、ニュース等での情報発信、オルグ活動、セミナーの開催などに反映してきましたが、さらに各地の仲間の状況や取り組みを把握し、共有していく必要があります。
また、引き続き全国の実態を踏まえてセミナーやニュースを充実させるとともに、相談・要望を待つだけでなく、各地に役員が積極的に出向くオルグ活動に力を入れます。
??地本への働き掛けを強めます
上記の取り組みを実現するためにも、当面、全農協労連青年部役員の選出単位でもある地本を軸にした全国の仲間の連携を強化します。
現在、地本の青年部組織があるところもあれば、組織はないけれども青年層の交流会が開催されているところ、情報交換できる場が確立されていないところなど、状況は様々です。
地本本体の体制や予算、地本内で実際に活動している単組青年部がどれだけあるかによって個別に対策を相談する必要がありますが、この間、地本単位で何らかの青年層の活動をもつことによって、職場ごとの活動を励ましたり、労働組合に青年対策を意識してもらえる重要なきっかけが作られています。
そうした前進が各地のなかまに伝わり、より積極的な青年部活動への理解や指導が得られるよう、全農協労連青年部の各役員の任務や関わり方を明確にして、具体的な変化がつくられるようにしたいと思います。
また、変化を呼び起こすためにも、全農協労連との連携はもとより、全農協労連女性部やこの間つながった他産業の労組青年部との多様な連携で、これまでの枠を越えた取り組みを打ち出すよう努力します。
以上

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