死後訪問
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今日は男性の方の死後訪問にいった
僕がはいると、奥さんがすごくよろこんでいた
彼女の看取りでのがんばりは、ほんとうに、愛情がこもっていた
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看取った時、彼女は、僕に質問したことがある
『ねえ、先生、主人をどんな服を着せるのがいいの?』
そうだね、なんでもいいんだけど、彼が一番お気に入りがある?
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『このスーツがある。主人はちびだから、もうだれも着ないの。主人も、何年もきていないの。でも、これ来て働いているとき、かっこよかった』
じゃあ、それにするといい
いちばんお気に入りをきて、そして旅立つといい
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お通夜で彼をみたとき、
スーツにネクタイをして、びしっと決めていた
ビジネスマン時代の古い鞄も、棺にはいっていた
彼女は、夢中で話す
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『先生、このひと、ほんと、ハンサムでかわいいでしょ。先生だから、正直にいうと、このひと、本当に好きで結婚したの。かっこよかったんだよ』
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控室で、親戚一同があつまっていた
僕は、彼の病気のはじまりから、きょうまでの日々
親戚や家族がおもっていた疑問にこたえた
僕が関係しない入院の医療の質問もあった
正直に、それは、医療が不十分だったとみとめた
でも、最期の最期まで、彼女のおもいのまま、そのままみとったことを
そこまで、みんなでまとめると、安堵感がただよった
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先生、すっきりしたよ
これで、送り出せたという気持ちになれる
そう言っていただけたので、死後訪問してよかったと思った


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