2014/7/9

福島の子供達の甲状腺ガン・・・放射線の影響なのか?  福島原発事故
 

■ 福島で子供の甲状腺ガンが90人?! ■

福島の子供達の甲状腺の検査で89人の「甲状腺ガンの疑いのある」患者が発見されました。この内、甲状腺の摘出手術を受けたのは51人で乳頭ガン49人、未分化ガン1人、ガンでは無かったのが1人でした。

手術を受けた理由はリンパ節転移などが疑われた為ですが、実際の何人に転移が発生していたかは発表されておらず、疫学者からは不必要な摘出主手術をしたのでは無いかとの疑問も出ています。リンパ節転移の件数は後日発表される事になった様です。

検査の結果は福島県が詳細を公表しています。

https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/65917.pdf


■ 会津では発生が一人だった ■

今回の発表で、今まで検査が進んでいなかった会津地方のデータが加わりました。その結果、会津地方の癌の発生が一人だった事から、「放射線の影響で浜通りと中通で癌が多発した」とネットで騒がれています。

会津   1人(検査32,208人中、割合は0.003%)
中通り 66人(検査176,357人中、割合は0.037%)
浜通り 23人(検査80,824人中、割合は0.028%)

会津の発生人数が一人と少ないのは検査を受けた子供が32,208人と少ない事と、2次検査受診率が49%と他地域の半分という影響は無視出来ません。しかし、2次検査の受診率が他地域と同等の90%以上になって、ガンの発見が2人になっても、発生率には10倍の開きがあります。

会津の0.003%と、中通り0.037%や浜通り0.028%は明らかに10倍の差が有り、これは有意差して無視出来ないものです。

■ 市町村別に比べると・・ ■


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http://www.sting-wl.com/fukushima-children1.html より

上のグラフは、放射線の影響を心配されている方が丁寧に分析して下さったものですが、市町村別の発生率で色分けされています。

赤色…1人〜999人に1人が発病
橙色…1000人〜1999人に1人が発病
黄色…2000人〜2999人に1人が発病
緑色…3000人〜3999人に1人が発病
青色…4000人〜5999人に1人が発病

市町村別にしてしまうと母集団の人数が少ない市町村の誤差が大きくなってしまう問題はありますが、それでも地域別の発生率の違いが上の地図から分かります。

会津の1人は市町村別の発生率では高率の赤色の分類に入りますが、これは母集団である2次検査受診者数が少ないので、一人の発生による影響が過大に評価された結果です。

■ 年齢別に見れば自然発生のガンである可能性が高い ■

福島県が年齢別のグラフを発表しています。

クリックすると元のサイズで表示します
https://www.pref.fukushima.lg.jp/uploaded/attachment/65917.pdf より」

グラフを見る時に注意すべきは、ガンが自然発生のものだった場合、事故当時の年齢に遡ってガンの有無を論議する事に意味が無い事です。

摘出手術を受けた子供達の検査時の中心年齢は16才ですが、分布的には18才、19才と年齢が上がる程、発生率は高くなる傾向が見られます。(21才が少ないのは、検査時に21才に達していた子供が少ない為)これは、発見されたガンが自然発生である可能性が高い事を裏付けています。

■ 千葉での女子高生での過去の検査との比較 ■

http://www.hcc.keio.ac.jp/japanese/healthcenter/research/bulletin/boh2004/22-19-22.pdf#search='%E6%80%9D%E6%98%A5%E6%9C%9F+%E7%94%B2%E7%8A%B6%E8%85%BA

上のページで1988年から16年間、千葉県の2869人の女子高生の甲状腺を検査した結果が載っています。これは甲状腺異常で来院した女子高生では無く、普通の女子高生を検査した結果の様です。抗体検査を行っているので、かなり小さな甲状腺腫も見つけるている事が注意点です。

検査数    2869人
甲状腺腫無し 1234人(43%)
甲状腺腫有り 1653人(57%)

この結果から甲状腺腫は高校生の女子の半分は持っている事が分かります。

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医療機関での精密検査の結果が上の表です。

甲状腺ガンの発生は一人です。

1人/2869人=0.03485%

この発生率は今回の福島のスクリーニング検査の結果とほぼ同等です。ただ、2869人の検査人数は統計的には小さすぎるので、単純な比較は出来ません。

この他に千葉大が新入生に実施している甲状腺の検査では9,988人の甲状腺触診スクリーニングで、甲状腺ガンが4人見つかっており、発生率(有病率)は0.04%となり、これも今回の福島の有病率とほぼ同等です。

今回、福島以外でも対照群として、青森・山梨・長崎3県の3〜18歳約4千人を対象に、福島県と同じ手法で実施した甲状腺調査でもがんと診断されたのは1人です。

1/4000=0.025%

サンプルの人数が十分では無いので対照群としては不適切ですが、傾向としては今回の福島や、それ以前の千葉県や千葉大の新入生の発生率(有病率)に近い数字となっています。

■ 会津地方で少ない事が特異的 ■

これらの検査結果を踏まえると、今回の福島の甲状腺のスクリーニング検査で会津地方の甲状腺ガンの発生率が少ない事の方が特異的だと思われます。

会津地方の2次検査は49%の受診率なので、これからもう少し正確な数字が出て来ると思われます。

■ むしろスクリーニング検査でガンを見つけてしまう事の方が問題が大きい ■

今回の報道で反原発派の多くが「やはり福島では子供の甲状腺ガンが多発したじゃないか」と声を荒げています。

しかし、医学の常識的には被曝後2年でガンが発生する事は考えられず、「今回の福島で発見されたガンは自然発生のガンをスクリーニング検査で大量に発見しただけ」という意見が常識的です。

むしろ疫学者の間からは、成長が遅い甲状腺ガンを早期に大量に発見して、多数の摘出手術を行う事に対する疑問が提示されています。

福島県民健康管理調査では、原発事故が起きた当時18歳以下だった子ども36万人を対象に甲状腺の超音波診断が行われている。事故から3年目となる今年の3月末までに、対象となる子どものうち約29万人が受診。2次検査で穿刺細胞診を受けた子どものうち90人が悪性または悪性疑いと診断され、51が摘出手術を実施。50人が甲状腺がんと確定している。
 
専門部会では、疫学を専門とする東京大学の渋谷健司教授が、この結果について、スクリーニング効果による過剰診断が行われている可能性があると指摘。また、放射線影響との因果関係を論ずるためには、比較対照群を設けるなど、制度設計の見直しが必要であると主張した。
 
これに対し、手術を実施している福島県立医大の鈴木真一教授は、「過剰診療という言葉を使われたが、とらなくても良いものはとっていない。手術しているケースは過剰治療ではない」と主張。
「臨床的に明らかに声がかすれる人、リンパ節転移などがほとんど」として、放置できるものではないと説明した。(動画の52分40分頃)
 
渋谷教授は「しかし、健診して増えたのなら、過剰診断ではないか。リンパ節転移は何件あるのか」と追及すると、鈴木教授は「取らなくてよいがんを取っているわけではない」と繰り返しつつも、「ここで、リンパ節転移の数は、ここでは公表しない」と答えた。(1時間35分頃)
 
こうした議論を受けて、日本学術会議の春日文子副会長は、現在、保健診療となっている2次検査以降のデータについても、プライバシーに配慮した上で公表すべきであると主張。また1次データの保存は必須であると述べた。
 
これについて、広島県赤十字病院の西美和医師も「部会として希望する」と同意。また、渋谷教授もデータベースを共有する必要があるとした。座長の清水教授もその必要性を認めたため、次回以降、手術の内容に関するデータが同部会に公表される方向だ。


http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1793 より引用

甲状腺は成長ホルモンを分泌する大切な器官です。これを摘出すると、成長ホルモン剤を服用する必要があります。甲状腺ガンは進行が遅いので、あまり小さな年齢で早期に発見して摘出する方が子供にとっては良くありません。

ですから、ガンが発見されても、それがリンパ節に転移しているなど深刻な状況で無ければ、ガンを温存する方が良いケースも多くあります。

福島以外の地域で大規模な甲状腺のスクリーニング検査が実施されない背景には、スクリーニング検査の結果、不必要な摘出手術を誘発して、結果的に子供の健康と幸せを奪う恐れが否定出来ないからです。

■ 福島の子供のガンの発生はこれからが注意が必要 ■

対照地域での大規模な子供の甲状腺のスクリーニング検査が出来ない以上、現在の福島の甲状腺ガンの発生が、自然発生によるものなのか、或いは放射線の影響によるものなのかを判断するには、今後5年、10年と福島でのスクリーニング検査を続ける必要があります。

放射線による甲状腺ガンが増えるとすれば、これからであり、現在の有病率0.03%よりも有為にガンの発生が増える様ならば、放射線の影響によってガンが発生したと判断されます。

福島では事故後非難が送れ、又、自治体が安定ヨウ素剤を備蓄していなかったる、あるいは配布をしなかったりしたので、大人も子供も事故初期に不要な被曝を強いられています。

特に、事故早期に発生するテルル132や、その崩壊過程で発生するヨウ素132は放射線が強く、特にヨウ素132による甲状腺被曝は無視出来ません。

確かに飲料水や食べ物は直ぐに規制されたので、チェルノブイリに比べれば甲状腺の被曝量は格段に少ないのですが、大気吸入による初期被曝がどの位あったのかは明らかになっていません。

最近、ようやく事故当時の15日頃にテルルが放出されていた事を認める研究者が出て来ましたが、高崎や筑波の観測結果から事故当時から私は指摘していた事です。


ヨウ素132を軽視してはいないか?・・・チェルノブイリの甲状腺癌
 (人力でGO 2012/5/9)


■ 初期被曝による影響は切り分けるべき ■

ヨウ素132やヨウ素131による初期被曝の影響は、これから明らかになってきますが、これらは本来、安定ヨウ素剤の服用で簡単に防げるものです。

原発事故が発生し、放射性物質の放出が不可避となった時点で、周辺自治体は安定ヨウ素剤の服用を指示し、同時に20Km圏内の住民を1カ月程度、強制的に短期非難させるべきです。さらに、SPEEDYのデータ予測に従って、高濃度の汚染が予想される原発の風下の住民も同様の対応をすべきです。

これさえ出来ていれば、福島で放射線による被害は将来的にも1人も発生しないはずでした。

現在のレベルの低線量率の放射線は、健康に何ら影響を与えませんが、事故直後のヨウ素132とヨウ素131は軽視してはいけないのです。


事故で大気中放出された放射性物質の量も、事故後、食物や水から摂取した放射性物質の量もチェルノブイリは福島の比較にはならない程多く、チェルノブイリの子供の甲状腺ガンの多発は、そのまま福島には当てはまりませんが、一方で事故対策が疎かになっていた政治や自治体、そして東電の責任は追及されるべきです。


仮に、放射線由来の甲状腺ガンが将来的にも発生しなかったとしても、住民を不要な危険にさらした責任は重いはずです。これが改善されない限り、大地震で必ず壊れる日本の原発は再稼働はすべきではありません。

そして、平常時年1mSv、事故時20mSv/年の被曝も危険とするICRPの防護基準を採用する限り、福島の悲劇は繰り替えされます。

これは、放射線による直接的な被害では無く、基準や政治が生み出す悲劇なのですから。


今年は冷夏ですので、反原発の皆さんもエアコン無しの生活にチャレンジしてみては如何でしょうか。ビールが旨いですよ!!


<追記>

一般の方は仕方ありませんが、「罹患率」と「有病率」の違いも分からずに「放射線で福島で子供の甲状腺ガンが多発している」と大騒ぎされている医師の方達は恥ずかしいので少し勉強された方が宜しいかと思います。

ここら辺は医学的知識というよりも統計の基礎知識の有無かと・・・。理工系の学科を出ている技術者には理解し易いのですが・・・。
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