2018/9/12

淘汰される地方銀行・・・資金移動の広域化  時事/金融危機
 

■ 安倍内閣の中では評価の高かった森前前金融庁長官 ■

安倍内閣の閣僚の中で、森前金融庁長官は評判の高い人物でした。

1) 国債金利がゼロ近傍の中で地銀は従来のビジネスモデルを捨てる必要性を強調
2) リスクを取りたがらない地銀のリスクテイクを促し、スルガ銀行を称賛
3) 地方銀行の生き残りの為のM&Aを推奨

4) リスクの高い個人投資への警鐘
   毎月分配型投資信託
   個人年金保険(特に外貨建てのもの)などの貯蓄性保険商品
   ラップ運用(特にファンドラップ)

 
1)〜3)は国債の金利がゼロ近傍に張り付く(国債価格が高止まり)する中で、地方銀行の国債依存は将来的な国債価格下落(金利上昇)に大して大きな脆弱性を抱えている問題に起因します。今のままの低金利が続いても地方銀行はジリヒンですし、仮に国債金利が上昇しても含み損で債務超過に陥る可能性が高い。

金融監督省庁としては、地方経済を支える地銀の崩壊は看過する訳にはいかず、警鐘を鳴らし続けていました。

4)に関しては、老人などを相手に銀行が怪しい金融商品を乱売して手数料を荒稼ぎする中で、そのリスクを老人達が理解していない事への警鐘です。金融庁としては、低金利時代の庶民の資産運用は「貯蓄から投資」が好ましいと考えていますが、一方でリスクの高い投資で個人が「損をしたという負の記憶」を植え付けられる事を避けたいのではないかと・・・。

いずれにしても、森前金融庁長官は金融システムの事を良く理解しており、他の閣僚に比べて「的を得た発言が多い」と評価されて来たと思います。

■ スルガ銀行をベタ褒めしていた森前長官 ■

地銀ん新なビジネスモデルとして森前長官が何度もフューチャしていたのが、女性向けシェアハウス「かぼちゃの馬車」を巡る不正融資で注目を集めるスルガ銀行です。

他の地銀が住宅ローンなどリスクの低いビジネスに引きこもる中で、積極的にリスクを取るスルガ銀行を次世代の地銀のあるべき姿として、大きく評価していました。しかし、今回の事件で、そもそものリスク管理が成されていなかった事が明らかになります。

沼津を本拠地とするスルガ銀行ですが、地元での評判は昔からスコブル悪い。同じ静岡の地銀でも静岡銀行は堅実経営の優等生、一方、スルガ銀行は昔からオーナー一族の争いが絶えない問題児というのは、地元では昔から有名な話。(これ、静岡で仕事をしていた親父から聞いた話。半分ボケが入っていますが、昔の話は良く覚えています)

当然、金融庁のトップがスルガ銀行の悪評を知らないハズも無く・・・本来ならば、スルガ銀行のリスク管理を問題視するべき所を、逆に持ち上げていた。

今回のスルガ銀行の一件で、森前長官の評判は随分と下がりました。

■ 80年代に地銀が淘汰されたアメリカ ■

資本主義の世の中にあって銀行とて弱肉強食の脅威に晒されます。かつて13行あった日本の都市銀行も今では5行となってしまいました。

一方、地方銀の統廃合は進んでいません。地方の衰退によって自県内だけではビジネスが成り立たなくなった地銀は、営業の広域化を進め、他県での融資を積極化していますが・・・お互いがお互いのテリトリーを侵食するだけなので、金利の叩き合いになって利益に結び付き難い。

アメリカでは80年代に地方銀行の規制緩和が行われ、地銀の活動が広域展開し易くなります。そこで、ウェルズファーゴやバンカメ、USバンコープといった地銀が積極的にM&Aを進め、広域巨大銀行へと成長して行きます。

広域化のメリットは様々ですが、地方の外の銀行を排除する事によって市場を寡占すれば、金利金利を高く維持する事が可能です。

実は自由競争や市場主義で多くの人が誤解しているのは「自由競争が価格の低下を促進する」という点です。市場で淘汰が繰り返される間は価格や金利は低下してますが、ある程度寡占化が進むと価格や金利は上昇に転じます。それを防ぐ為に独占禁止法が有るのです。

何れにしても、金融庁の思い描く地方銀行の再編モデルは80年代以降のアメリカでは無いでしょうか。

■ 儲からない地銀が集まってもリスクは減らない ■

ところで、今回のスルガ銀行の事件が明らかにした事は、「地方においてリスクに見合う金利が確保できる投資物件は枯渇している」という事です。地方銀行は住宅ローンなど、リスクに見合る担保を取れる確実な投資しかしませんが、縮小を余儀なくされた日本の地方において「成功」する投資物件は非情に限定的です。

ですから、金融庁がいくら地方銀行の統廃合を進めても、儲からないビジネスを行う銀行同士が合併しもてメリットを事務やシステム管理の経費削減や、資本力強化による若干のリスク耐性の強化や資金調達コストの低減くらしでしょう。

本来は地域に密着して有望な企業家をサポートし、地域経済を活性化させるがのが地銀の役割ですが、バブル崩壊以降、地銀は保守的な経営に終始していまっしたから、「地域産業を育てる」というノウハウが既に失われています。まっとうなリスク管理が出来ないのです。

だから、停滞する地域経済の中で営業成績を上げようとすると、スルガ銀行とカボチャの馬車の様な不正に走ったり、アパートローンの様に将来的にはローンの借りてが絶対に損をする様な詐欺ビジネスが横行します。

■ 地域の隅々から吸い上げたお金をグローバルに運用する? ■

地銀の生き残り戦略の一つとして、地域から集まった預金の運用をメガバンクに任せるとい試みも始まっています。

日本はゼロ成長経済ですからリスクに見合う投資物件は地方には多くは存在しません。しかし、世界に目を転じればアメリカ国債だって十分な金利水準になっていますし、新興国の金利は相当に高い。ただ、為替リスクや相場の変動リスクを十分にヘッジする運用ノウハウを地銀の行員は持ち合わせません。

金利が高いからといって海外の怪しい金融商品に手を出すと、為替や相場の下落で痛い目に遭います。

ですから、資金運用をノウハウを持つメガバンクに任せるという手段は地方銀行にとって魅力的ですし、投資資金が増えるメガバンクにとってもウィン・ウィンの関係となります。

しかし、この方式ですと地方のお金は都市部や海外で運用されるので、地域経済を活性させる事は出来ません。金利が得られる富裕層は裕福になりますが、資金が吸い上げられた地方経済は疲弊します。


■ 世界の隅々から庶民のお金を集めたら破綻させる・・・・ ■


実は国際金融資本家たちは金利を巧みに操作して、世界の隅々からお金を吸い上げています。そして、庶民がコツコツを貯めたお金で投資をして利益を食い漁ります。

しかし、「全員分の利益が無い」というのが世の常。結局は好むと好まざるに関わらず、逃げ遅れるのはいつも庶民の資金です。

日本では預金が未だにメインですからリスクは低いと思うかも知れませんが、地方銀行の預金も海外で溶けて亡くなる可能性は充分に高い。

従来は、政府が資本注入したり大手行に救済させて来ましたが、それは損失を国民の税金や、預金者の金利で肩代わりしているに過ぎません。

これが金融資本家達の常套手段です。彼らは大きな危機を起こして誰かの損が確定する時に、利益を確定するのです。


■ 大蔵省から金融庁を独立させた意味 ■

金融庁は庶民の味方と思っている方は大きな勘違いをしています。

そもそも金融庁はノーパンシャブシャブ事件を切っ掛けとした大蔵省の解体で、誕生した省庁です。あまりにも権限が大きく、アメリカとて手の出せなかった大蔵省から金融庁を分離させて、グローバル金融の傘下に日本を組み入れる事を目的とした省庁だとも言えます。

だから、「地方銀行の統廃合」にしても、「貯蓄から投資」にしても、論理的に正しくても、結果が日本人の庶民の為になるとは限りません。

これは「郵政民営化」も同様です。「ゆうちょ銀行」は現在は世界最大で最悪の機関投資家となってしまいました。

■ フィンティングの時代に地方銀行は生き残れるハズが無い ■

地方銀行は、地方に充実した支店網を持ち、地域の経済に資金を供給する重要な役割を担っていました。このきめ細かな支店網や融資は、メガバンクには不可能でした。

今後、金融の電子化が進み、PC上でお金の貸し借りが容易になれば、地域密着の支店網の意味は薄らぎます。庶民はカタログをめくる様に、PCで預金金利の高い銀行を検索し、同様に金利の高い投資を物色します。

投資のリスク判断をしたり、コーディネートをする様なビジネスやサイトは増えて行きますが、地方の小さな投資案件のリスクは判断する事は益々難しくなるでしょう。

地銀が地道に地方の優良投資先を開拓しても、グローバルな金利の前には見劣りします。当然、地銀から資金は流出して、経営は成り立たなくなるでしょう。


■ 地銀が悪いのでは無く、過度のグローバル化が問題なのだが・・・ ■


いままでの記述だと、経営努力を怠った地銀が悪い様に受け取られるかも知れませんが、実は地銀は悪く無い。悪いのは過度のグローバル化です。

お金が金利に引っ張られるという性質上、成長力の落ちた地方経済から資金が流出するのは必定です。

政府は地方再生と言って、盛んにバラマキを繰り返しますが、このお金は金融を通じて地方から海外にどんどん流出してしまいます。これは見方を変えれば日本人の税金で海外の発展が達成されているのと同義。

グローバル的には正しく、日本ローカルや、地方ローカル的には間違っています。そのベストバランスを探るのが本来の政治や官庁の役目であって、「地銀の時代は終わった」と切り捨ててしまうのは無責任と言えます。


尤っも、今後、地銀からは優秀な人材がどんどん流出して行くでしょうから、好むと好まざるを問わず、地銀の生き残りは難しくなるのでしょう。



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2018/9/13  12:47

投稿者:人力
たまこ さん

預金保険機構の責任準備金は3.6兆円。総被保険預金の僅か0.3パーセントに過ぎません。拓銀クラスが破綻した場合、保険金額は2兆円と資産されていた様ですから、地銀がいくつも破綻するだけで準備金は底を尽きます。大規模な金融危機や日本国債の金利急上昇で銀行が多数破綻危機に陥った場合、多分預金者は預金引き出しに銀行の窓口に殺到しますが、預金の9割融資などに回されていますから、銀行は預金解約に対応できません。この様なケースではシャッターを開けられないので事実上の預金封鎖となります。貸金庫にアクセス出来るかも疑問です。

パニックが数日で収まれば、限度額を決めて引き出しに対応しますが、その間に円の価値はどんどん失われて、政府が銀行に資本注入する頃には円の価値が1/100になっちゃった...なんてケースが最悪のパターン。

2018/9/13  12:06

投稿者:たまこ
こんにちは。
人力さんは、預金保護法は守られると思われますか?

某金融機関の人は、無利息の決算預金さえあてにならないといっていました。

2018/9/12  12:20

投稿者:人力
ゆうこ さん

トランプ政権の打ち出す貿易戦争ですが、第二次世界大戦前夜のブロック経済に似ているとも言える。

一方で、各国の対米輸出が減るという事は、各国のドルの外貨が減るという事で米国債の売れ行きに陰りが出て米国債金利上昇の圧力が高まります。輸入が減れは米国内のインフレ率も高まります。

FRBに金利上昇ペースを抑える様に要求する一方で、金利上昇を促すトランプ。FRBは確信犯的に金利を上げ続け、新興国から次第に資金は米国に還流しています。

次に予想されるのはトルコやアルゼンチンなど新興国通貨暴落による新興国の通貨危機ですが、これは一方でドルの防衛になる。

ところが、通貨下落で新興国の輸出は復活する。どうもトランプの政策の整合性が見えないのですが、新興国通貨の下落による輸出力の回復を見越しての関税引き上げならば、何となく納得も行く。

次回、ここら辺を妄想してみます。

・・・いずれにしても、金利水準が上がっても、新興国バブルが弾けても、今の金融市場は一度リセットせざるを得ないと思いますが。

2018/9/12  10:49

投稿者:ゆうこ
過度のグローバル化もアメリカ自らが縮小しているからこちらも時間とともに落ち着くかもしれません

どちらにせよ金を貸して儲ける・金を右左に動かして手数料をもらう・・・このシステムがあと数年で限りなく小さくなる予定です
後は地銀、都市銀行とも大変な時代ですね
もちろん日本だけじゃなくて世界中の銀行が大変です

日本のもうけを掠め取っても・・永遠は無理だし

それぞれの国の銀行もこれからは大変な時代です

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