2019/4/9

金利の逆襲・・・金利は死んだのか  時事/金融危機
 

■ 先進国の潜在成長力はゼロ?! ■


池田信夫氏は、日銀の異次元緩和に否定的な立場でしたが、最近では肯定的な発言をブログで展開しています。

1) 日本の潜在成長率は0%以下
2) 日銀の異次元緩和は金融政策では無く財政政策としての財政ファイナンス
3) 民間の需要が低下する中で、政府が支出を増やさなければ成長力は維持出来ない
4) 安倍政権で景気が拡大した原因は、財政ファイナンスによる経済効果

5) 潜在成長力が金利を下回る間は、財政を拡大しても借り換えの繰り返しで財政は破綻しない
6) 国債金利がゼロの間は財政負担を増やさずに借り換えが可能

7) ゼロ成長経済下でのインフレ要因は財政インフレ

ざっとこんな内容です。


■ 「無邪気な社会主義者」とは一線を画す「宗旨替え」 ■

私はリフレ派は「隠れ財政ファイナンス派」だと疑っていました。「実質金利をゼロ以下にすれば景気が回復する」という彼らの主張は「呪いで景気は回復する」と言うに等しいものでしたが、それを主張する面々の「狐かタヌキ」の様な面構えを観るに、彼らが本心からリフレ論を主張しているとは思えない。特に黒田総裁は・・。

ここに来て真面目な池田信夫氏も日銀と財務省の真意に気付いた様です。尤も、三橋貴明氏らの様に「無邪気な社会主義者の願望」とは違い、通貨と金融システムの構造変化に注目して、意見を変えている点には注意が必要です。

■ 成長率を抑圧する「GDPに反映しない価値」 ■

池田氏の最新のエントリーで興味深いのが、アメリカですら潜在成長率がゼロ近傍に下がっているという指摘。原因にはコンピューターの進化によって、需要が低下した事が挙げられています。数万円のスマホで昔の大型コンピューターに匹敵する処理速度があるのですから・・・。

さらに、情報というものに値段が付けられない事もGDPの低下の要因だとも。確かに「タダ」で垂れ流される情報によって、私達は精神的満足を得ています。いえ、タダでブログを垂れ流す私も精神的な満足感を得ています。ただ、そこには経済的な価値は生まれません。GDPにカウントできないのです。

■ 労働分配率の低下も原因 ■

リベラリストの多くが指摘する様に、「労働分配率の低下」も大きな要因の一つです。「大企業が内部留保を増やしたり、利益を株主の配当に当てたり、自社株買いに当てる事で、利益を労働者に正当に分派うしていない」という主張は、経済学者からも指摘されています。

従来であれば、産業の成長に伴って労働力不足が発生して、企業が労働者を奪い合う過程で賃金は上昇します。

しかし、IT化と機械化の進歩は、ルーティンワークを労働者から奪います。企業の事務部門はスリム化され、工場作業は機械に奪われました。

それらの作業から弾き出された人達は、IT(将来的にはAI)や機械では出来ない作業や仕事に従事します。レストランのウェイトレスや、ファッションショップの店員、ヘアデザイナーや、医療介護従事者など、人と接する事をお客が求める産業に労働者は流れますが、これらの産業は「労働集約型産業」で生産性が低い。当然、賃金は低下します。

■ 先進国においてゼロ金利は常態化するのか ■

日本は世界のトップランナーでゼロ金利が常態化しています。今後、欧州が、アメリカが、そして高齢化が加速度的に進むアジアの新興国がこれに続くのかも知れません。

問題は「ゼロ金利では金融機関が破綻する」という困った事実です。金利が死んだ世界で、銀行の金融仲介機能は働きません。誰もゼロ金利の銀行に預金しようとは思いません。(日本は例外ですが)

ゼロ金利と言っても、政策金利の話であって、実際の市中金利は別です。私が銀行に借金を頼もうとすれば、当然、高い金利を吹っ掛けられます。しかし、高い金利を取られて、それに見合う利益が期待出来なければ、そこで借金を思い止まります。

「ゼロ金利=成長力ゼロ」なのですから、金利がゼロに張り付いた時点で、多くの投資機会は失われます。確かに「例外」はいつの時代にも存在しますから、「誰かがビジネスで成功する」事は有りますが、多くの人が成功する時代は終わっています。

これが、日本のみならず、欧州やアメリカでも起こるとすると・・ちょっと恐ろしい。

■ 「預金から投資へ」の掛け声では解決しない ■

金利がゼロに張り付く時代を見据えて、金融庁は個人の投資を推奨して来ました。「預金から投資」というキャッチフレーズで積立nisaなどを展開します。又、融資による利益を失いつつある地銀の統廃合を推奨して来ました。

ゼロ金利が常態化すれば、個人が預金で金利を獲得する機関が奪われるのですから、資産運用は投資に傾く事は当然です。

ところが、ここに落とし穴が待ち受けています。

国内投資で儲かるのは、株式運用や不動産RITEですが、これらの市場は金融緩和マネーと個人の資産運用の資金が流入してバブル化しています。さらに、年金資金や日銀マネーまで投入されて市場は過熱しています。

海外の投資の多くは、為替リスクを考慮しても利益が出る投資先は、ジャンク債や、高金利通貨
アメリカの中小企業の債券を証券化したCLOなど、かなりハイリスクな投資になります。これらの投資先は、一度リスクが顕在化すると「総崩れ」になります。


■ 経済発展の上の成り立っていた金融から、鉄火場の上で危ないバランスを取る金融へ ■

「ゼロ金利=ゼロ成長」が金融市場に与えた変化は、「リスク」の意識の変化です。

「融資」という間接金融が支配していた世界では、「リスク」は「プロ」が判断していました。銀行の融資担当は、長年の顧客との付き合いの中で、適格なリスク判断をしていました。

ところが、ゼロ成長の時代に、信用力の有る企業は、株式発行や社債発行によって直接資金調達が可となり、融資による金利水準は低下します。一方で、本当に融資を必要とする中小企業は、将来性が不安視されて高い金利でしか融資を受けられません。・・・そう、銀行の金融仲介ビジネスは成り立たなくなっているのです。

一方、手っ取り早く金利を稼ぐ方法として「金融市場」が拡大します。ここでは「債券化」や「証券化」というトリックによって「リスクが粉飾」されています。ただ、金利が高いという理由だけでお金が集まり、お金が集まると「儲かる」という噂が立ち、さらにお金が集まります。

金融市場では「情報の速さ(情報の非対称性)」と「逃げ足の速さ」が勝敗を分かちます。情報弱者の一般人にとっては「ギャンブル」に等しい世界です。情報に通じて早期にリスクを取り、早期にリスクを切り捨てる者だけが勝者の世界です。(要はインサイダー以外は勝てない)

■ セロ生長 → ゼロ金利 → 博打金融市場の肥大化 → 崩壊 ■

サマーズ氏らが提唱する「生長の限界」は、経済や金融市場の一面しか観ていません。いえ、サマーズは「バブルは必要悪だ」的な発言もしていますから、利口な彼は全体が見えているのでしょう。

結局、ゼロ金利に張り付いた世界では、過剰流動性が生まれ、これらが金融市場やコモディティー市場を肥大化させ、そして不安定化させます。

その先に有るのは「バブルの崩壊」ですが、この規模は崩壊を繰り返すごとに拡大しています。リーマンショックの際には金融市場の崩壊が意識されましたが、次の崩壊はもっと大規模に発生します。

どこかの時点でこの連鎖を断ち切る必要が有りますが、「借金がお金を生み出す」現在の「信用創造システム」では、この過ちが繰り返される事に歯止めが掛かりません。「借金した者が勝ち」の世界なのですから。


多分、リーマンショック後の世界的な金融緩和バブルは「大崩壊」で終焉を迎えます。その規模は「銀行システムの信用」にも及ぶと予想されます。事態がここに至って初めて世界は、新たな通貨システムを模索し始めるのでしょう。ただ、それは「真面目なシナリオ」です。


「不真面目なシナリオ」も存在します。「戦争」によって「過剰」を奪う事で、世界をリバランスする方法です。「過剰」なのは「生産力」と「人口」・・・・。残念の事に「不真面目なシナリオ」の方が即効性が高く、調整も簡単です。この魅力に人類が勝てるのか・・・?
11

2019/4/11  1:53

投稿者:人力
ぎんやんま さん

過剰な人口も、過剰な生産力も・・・新興国や途上国の有る・・・。先進国より戦争に巻き込まれ易い・・・。

2019/4/10  3:29

投稿者:ぎんやんま
人類の歴史は繰り返されるですね。

繰り返されはしますが人類が戦端を開く重大な決断(少数の権力者による決断ですが)レベルのようなものは近年飛躍的に上がっていると信じたいですね。
古代の生存に関わる食料を奪い合うための本能的な戦争、中世の絶対的君主の私欲などによる戦争、近世の列強国の国益拡大のための戦争、近年の世界秩序を守るという名目で行われている独裁国家の殲滅戦争など、徐々に表面的ではありますが理性的にはなっているなと(笑)

ただし人力さんの言う今後さらに過剰になりすぎていく人口と生産力のリバランス役として近いうちに起こるであろう戦争は現在の人類の決断レベルでは避けられないでしょう。

これが超大国(もちろんアメリカ中心ですが)が陰謀論的に恣意的に行うのか、また生存本能のようなナショナリズムが理性的に暴走(矛盾してますが)して起こるのかと言うところでしょうか。

「人類の革新」はまだまだ遠いですね(苦笑)




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