2010/11/3

「海街diary」・・・本音をみつめる女性の視点  マンガ

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■ 少女漫画という迷宮 ■

「男子たるもの少女漫画など決して読まない!!」という男気に溢れた方で無くとも、男性で少女漫画を読まれる方は案外少ないようです。

姉妹のいらっしゃる方なら、子供の時に「りぼん」や「マーガレット」くらいは手にした事はあると思いますが、やはり少年漫画に慣れ親しんだ身としては、なんだか尻の下がコソバユイような、妙な居心地の悪さを感じた事でしょう。

私の子供の頃は、「ベルサイユのバラ」や「キャンディー・キャンディー」や「ハイカラさんが通る」や、「エースをねらえ」などがアニメで放送され、学校から帰って来ると男子でも普通にこれらの番組を見ていました。

しかし、原作漫画を読もうとしても、大きなウルウルとした瞳や、背景に咲き乱れる花や、コマから平気ではみ出してくる絵や、線の細い絵柄や、異様に長い足や、これまた異様に高い鼻に邪魔されて、なかなか読み進める事が出来なかった事を思い出します。

少女漫画は男子が足を踏み入れてはいけない迷宮でした。

■ 少女漫画の少年漫画化? ■

ところが、最近話題の少女漫画を手にしてみると、意外に読みやすい事に驚きます。

大ヒットした「のだめカンタービレ」などは、ビックコミック・スピリッツあたりに連載されていてもおかしくありません。リズムもテンポも構図も実に少年漫画のそれに似ています。

最近流行りの百人一首漫画「ちはやぶる」など、絵柄こそ少女漫画ですが、その本質はスポコン漫画そのものです。

これらの作品に比べれば、所謂「オタク系」の少年漫画の方が、余程女性的というか中性的と言えます。

漫画の世界においても、性差は縮小傾向にあるようです。

■ 少女漫画は実は奥が深い ■

私が少女漫画を読み始めたのは家内の影響です・・・というよりも、家内と結婚したら、もれなく少女漫画が付いて来ました。昔の「りぼん系」のカワイイ作品が多かったのですが、「陸奥A子」の最近の作品なども混じっていました。

「陸奥A子」の「記憶のダリア」を読んだ時のショックは今でも覚えています・・・。

老人と恋をする少女の話は、男性には生理的に受け入れ難いものがありますが、陸奥A子のカゲロウの様なタッチで描かれた世界では、それが自然に受け入れられる気がしてしまいます。・・・「ああ、少女漫画ってこんなに奥が深いんだ」・・・ある種のカルチャーショックでした。

それ以降は、本屋で面白そうな少女漫画を探す事が楽しみになりました。・・とは言うものの男性として受け入れられるのは、あっさりした絵柄の作品が多い事も事実です。

■ 男性にお勧めの一冊を選ぶならば・・・■

「男性にも薦められる最近の少女漫画は?」と聞かれたら、吉田秋生の「海街diary」のシリーズを挙げるでしょう。

鎌倉で暮らす4姉妹のストーリーは、日常をさり気なく切り取りながらも、女性の視点の鋭さや残酷さ、身勝手さなど、男性漫画では知る事の出来ない世界の一面を垣間見せてくれます。

「天然コケッコー」の「くらもちふさこ」の最新作の「駅から5分」も素晴らしい作品ですが、こちらは漫画表現の限界に挑む感じで、少女漫画入門というよりは、漫画好きが最後に行き着く先といった感じです。

■ 「海街diary」は鎌倉という街が主役 ■

(ここからネタばれ)

鎌倉は極楽寺で暮らす3姉妹の元に父親の訃報が届きます。かつて彼らを棄て、女の下に走った父ですが、長女以外は幼かったので、父の記憶もおぼろげです。

お棺に横たわる父を見て3女の放つ「知らないオッサン・・」という言葉に、彼女達の父との関係が現れています。

そんな彼女達の父は、再婚後、娘を一人設けて妻に先立たれ、その娘を連れて、さらに二人の幼い男の子がいる女性と再婚し、秋田の温泉旅館に住み込みで働いていました。この父親の死によって娘の「すず(中2)」は、血の繋がらない母や弟達との生活を余儀無くされます。

そんな「すず」に葬式に出向いた長女の「さち」は、鎌倉で一緒に暮らさないかと突然持ちかけます。「すず」は即答で承諾します。

こうして、鎌倉での4姉妹の生活が始まります。

看護婦で医者と不倫するしっかり者の姉の「さち」、地元に信用組合に勤める酒好きのオヤジギャル(死語ですね)の「佳乃」、スポーツ店に勤め大雑把なアフロヘアーの「チカ」、男子顔負けのサッカー選手の「すず」。4人とそれを取り巻く人々が、複雑に絡み合いながらも、普通の日常が展開していきます。

しかし、物語の主役は「鎌倉」です。姉妹の家のある極楽寺、入院したサッカーの友人を見舞う二階堂、別れ話を告げる、稲村ガ崎。ミステリアスな佐助稲荷など、物語が進行するに従って、背景であるはずの鎌倉の存在感が増してきます。

■ 「すずちゃんの鎌倉散歩」なるガイドブック ■

一巻目の巻末には地図が付いていて、物語の舞台となった場所が分かる様になっています。しかし、それが好評だったのか、「すずちゃんの鎌倉散歩」なる本まで出版されました。

「海街diary」を読むと、誰しもが鎌倉に行っきたくなるのです。そこに行けば、登場人物たちが本当に生活している様な、錯覚に陥るのです。

■ 娘と妻を連れて「鎌倉散歩」 ■

中2の娘も、この漫画を読んでから鎌倉に行きたがります。
そこで、先週の日曜日に「鎌倉散歩」に出かけました。

物語の舞台は、所謂観光地と言うよりは、鎌倉に生活する人の普通の街です。だからこそ、観光地以外の鎌倉を知る上での、最適なガイドマップとなっています。

今回は1巻の後半で、小児癌になったチームメイトを「すず」とその友人が見舞う時に行った「二階堂」を尋ねてみました。

二階堂は、鎌倉で幕府開府以前から有力者達が住んでいた地域です。言うなれば、最も古い鎌倉が残る地域です。

鎌倉宮のさらに奥に進んで行くと、二階堂川が現れ、谷津の奥の普通の住宅地が現れます。すず達はここに友人を訪ね、結局会う事が出来ずに二階堂川に掛かる橋で時間を潰します。

その場面が下のページ。

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ページ右下の瑞泉寺に向かう上り坂が下の写真。

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そして、3人がコロッケを食べながら時間潰すのが下の写真の橋。

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まあ、どうと言う事の無い場所ですが、「海街ファン」と思しき若い女性などもチラチラと見かけました。

■ 人間の「本音」を見つめる女性の視点 ■

漫画の舞台に行ってみたくなる程、吉田秋生の作品の人物には実在感があります。それは、人間の「本音」に鋭く迫っているからです。

少年漫画が根性とポリシーの上に成立するならば、吉田作品は現実を直視する視線の先に成立します。

ちなみに、二階堂の奥にある「瑞泉寺」とその裏の「天園」一帯は、鎌倉の紅葉の名所です。鎌倉で一番遅い紅葉が山を染め上げるのは、11月の下旬ごろでしょうか?

皆さんも是非、「海街」片手に訪ねてみては如何でしょうか?
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