2012/5/9

ヨウ素132を軽視してはいないか?・・・チェルノブイリの甲状腺癌  福島原発事故
 


■ ヨウ素132という伏兵 ■

私の尊敬する「六号通りの先生」のブログで、
チェルノブイリの子供達の甲状腺癌の原因は、
ヨウ素131だけでは無く、テルル132と、
その娘核種であるヨウ素132の影響もあるのではないかと書かれています。

これは目からウロコです。

チェルノブイリの子供達に多発した甲状腺癌の原因は
一般的には事故直後に規制されずに流通した牛乳に含まれたヨウ素131だと言われています。

一方で「低線量の放射線は安全」と主張する私なども、
チェルノブイリ周辺のヨウ素131による初期被曝が
本当に甲状腺癌の原因であったかどうか、イマイチ自信が持てないでいます。

その理由は、ヨウ素131は甲状腺癌やバセドー病の治療に内服されており、
内服される量は、、3.7〜7.4 GBq(1 GBq=1,000,000,000 Bq=10億Bq)と大量です。
これは、I-131の飲料水1kgの暫定規制値300 Bqと比べて1千万~2千万倍に相当します。
(水の量で言えば、1万~2万トン!)
バセドウ病でも、甲状腺がんの10分の1くらいの放射線量を使います。

「がんの放射線治療──その3 放射性ヨウ素内用療法
http://tnakagawa.exblog.jp/15314393/

この事実は、人体の細胞が放射線に対して強い耐性を有する事を示すと同時に、
ヨウ素131が本当にチェルノブイリの甲状腺癌の原因であったのかを
疑わせる材料にもなっています。

■ ヨウ素131の85倍の強さのβ線を放出するヨウ素132 ■

ヨウ素131はウランの崩壊によって直接生成される放射性物質です。

一方、ヨウ素132はテルル132が核分裂する事で生まれる娘核種です。

ヨウ素131(半減期8.02日)、
テルル132(半減期3.204日)
テルル132の娘核種のヨウ素132(半減期2.295時間)

一般に原子力事故の直後に大量に検出されるのはヨウ素131です。

下のグラフは事故後、つくばの産業総合研究所が測定した核核種の比率です。
http://www.aist.go.jp/taisaku/ja/measurement/index.html

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事故後3日後からのデータです。
半減期8日のヨウ素131は最初に放出された量の75%程度が残っていると考えまられます。
半減期3日のテルル132は、ほぼ半分が崩壊してヨウ素132になったと考えられます。
ヨウ素132はテルル132から生成した後、半減期2.3時間で
次々と崩壊して、安定したXe132を生成します。
(このデータでは比較的、ヨウ素132の比率が高く感じます)

産業総合研究所は放射線スペクトルも測定し、公開しています。(赤線が3月15日)

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ヨウ素131のスペクトルが比較的エネルギーの低い位置に2本、
テルル132のスペクトルが同様にエネルギーの低い位置に1本見られます。

一方、ヨウ素132のスペクトルはヨウ素131やテルル132より
2倍以上高いエネルギーのスペクトルが12本も観測されています。

縦軸はカウントされた放射線の数で、横軸が放射線のエネルギーです。
これを掛け算した値が、実際の放射線強度になります。

目算で計算してみました。
ヨウ素131・・・4.3x10_6乗(kEv)
ヨウ素132・・・28.0x10_6乗(kEv)

ヨウ素132の発する放射線の強さは、6.5倍になります。

■ 半減期の短い核種は被放能(放射線の強さ)が強い ■

放射線の強さを表す被放射能は、半減期の時間に反比例します。
半減期の短い核種の方が、半減期の長い核種よりも比放射能が高くなります。


ヨウ素131(半減期8.02)、
ヨウ素132(半減期2.295時間

放出される放射線のエネルギーが同じだとすれば、
ヨウ素132の被放射能はヨウ素131の85.7倍のエネルギーを持つ事になります。

実際には上のスペクトルからも、
ヨウ素132の放出する放射線のエネルギーはヨウ素131の放出するエネルギーよりも高いので、
同じ原資数のヨウ素132の放出する放射線は単位時間では100倍も強いと言えます


■ 高碕観測所のデータを見てみよう ■


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上の表は3号機の爆発燃料プールの即発臨界爆発であった可能性を示唆するとされる
CTBT放射性核種探知観測所の観測データです。
3月15日のデータは、測定エラーだったとして、消去されています。

放射性物質は風によって運ばれるので
日付の違うデータは、異なる大気サンプルを測定していると考えるべきで、
違う日にちを比較して、核種の増減を議論しても意味が無いので
3月16日のデータに着目します。

ヨウ素132は、ヨウ素131とほぼ同じ量だけ検出されており、
テルル132はヨウ素131より一桁多い量が検出されています。

さて、仮にこの大気を体に吸収したとしましょう。

ヨウ素132は2.3時間で崩壊しますが、
ヨウ素131の5倍近い量のテルル132は3日程の半減期で
ヨウ素132を体内で供給し続けます。

ヨウ素132は血流に乗って甲状腺にたどり着き、
そこで選択的に吸収され、短い時間の間にβ線を放出しながら次々に崩壊してゆきます。

仮に、常にヨウ素131の同量のヨウ素132が供給されるとするならば、
甲状腺はヨウ素132によって、ヨウ素131の百倍のエネルギーを受け続けます。

■ 問題はDNAの修復が追いつくかどうか ■


さて、ここでチェルノブイリの状況に戻ります。
子供達の甲状腺を被曝させたのは、放射性ヨウ素に汚染された牛乳だと考えられています。
福島事故と違い、汚染牛乳が規制されなかったチェルノブイリでは、
生物濃縮によって放射性物質に高濃度に汚染された牛乳を子供達が飲んだ可能性があります。

原子炉から放出される放射性ヨウ素はヨウ素135など沢山の種類がありますが、
原子炉で直接生成される放射性ヨウ素の内、半減期の短い(6時間)ヨウ素135などは、
生物移行や、牛乳の流通過程で崩壊して消えてしまいます。

結果的に牛乳に含まれていたのは、半減期が8日と長いヨウ素131と、
テルル132から継続的に生成されるヨウ素132、
そして、ヨウ素132の供給源であるテルル132であったと考えられませす。
(当然、セシウムも)

ここでいつも問題になるのは、チェルノブイリの子供達の初期被爆量が分からない事です。

子供の甲状腺癌が多発したという結果だけから見れば、
その被爆量は相当に高く、
その原因の一つは、ヨウ素131の100倍のエネルギーを放出する
ヨウ素132であったと考える事が自然である様に思えます。

DNAの修復能力は目を見張るものがありませすが、
それを上回る被曝を、チェルノブイリに子供達の甲状腺が受けてたと考えるより、
チェルノブイリの子供達の甲状腺癌の多発は説明が付かないのです。


バンダジュエスキー論文は、初期被曝をほぼ無視して、
死亡時の体内の放射性物質の量で検討が為されています。

老人や子供達が志望する事故から数年経過した後では、
体内の残っているのは、半減期が30年と長いセシウムです。

しかし、実際には事故直後にこれらの人達は、
大量のヨウ素131や132に被曝していた可能性が高いのです。

あまり科学的でない推測ではありますが、
ヨウ素132の存在は、今後注目する必要がありそうです。
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