『情報デザイン入門』
渡辺 保史(著)
2001年
平凡社
★★★★☆
平凡社新書の「096」。サブタイトルは「インターネット時代の表現術」。
父の本棚に並んでいたのを発見し、それほど期待せずに読み始めた。タイトル・サブタイトルから連想した内容とはだいぶ異なっていたが、良い方向に裏切られたと思う。デジタル機器の使いこなし術・21世紀の情報発信術(?)をテーマにした本かと思っていたら、「情報デザインは、物事の背後にある見えない関係を発見し、それを組み換えることなのである。」なんて言葉を見つけて冒頭からワクワクしてしまった。
本書は、「“関係のデザイン”としての情報デザイン」を切り口に、空間上に広がる情報、時間軸に沿って変化する情報、道具と人(あるいは、道具と道具)との間のインターフェース、地球規模で現れる巨視的な関係性、環境に溢れているアフォーダンス、コミュニティのためのデザインとデザインのためのコミュニティ、といったテーマについて、国内や欧米の先進的な試みを紹介しつつ語っていくもの。グラフィックデザインやWEBデザインの話をする際にも、「関係を発見し表現する」という著者の視点がぶれないため、議論のレベルが深いところに保たれていると思う。
2001年に刊行された本であるため、WEB上の「面白い取り組み」に関してはやや古臭く感じざるを得ない点もあったが、WEB 2.0なりSOAなり、といった動向を予見するかのような議論は鋭いと思う。
文系の新書らしい本、という印象。大事なのは情報そのものではなく、その関係性だということに気づかせる、面白い本だと思う。
本文220ページ程度。
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Kota's Book Review
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Terai, S. Web Page

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