ジョギングで面白いのは、その日の体調というものは、走ってみないとわからない、ということだ。10分くらい走ってみてようやく、「今日は身体が軽い」とか「前日の疲労が残っている」とか「何か調子悪い」とかわかる。それまでは全くわからない。
この走り始めの10分で到達するのが、その日の最初の「走りの均衡点」だ。「走りの均衡点」というアイデアはジョギングを始めてまだ数週間の頃に思いついたものだったと思う。
一口に走ると言っても、決めなきゃならない要素はいろいろある。例えば、スピード、ストライド、ピッチ、腕の振り方、呼吸の仕方、等々…。これらが、うまくピタッと組み合わされると、非常に走り易い。その組み合わせが見つからないと走りづらい(苦しい)。そして、そういう走りの均衡点は1つだけでなく、いくつもある。
その日走り始めてすぐは、まだちょうど良い組み合わせが見つかっていないので、何となく走りづらい。その後、特別に意識しなくても、「
苦しさのU字曲線」の最小点が実現できるように、身体が勝手に調整してくれる。上手い組み合わせが見つかって、軽快に楽に走れるようになる。僕の場合、これにだいたい10分くらいかかる。
好きなように走っている場合、当然、この均衡を保つように走り続けるのが一番楽。ところが、そのうち、この組み合わせでは苦しくなってくる。体温も心拍数も上がってくるだろうし、汗もかくから身体の水分も減ってくる。だんだん胸が苦しくなってくる。このとき、単にスピードを落とすだけでは楽にならない(「
U字カーブの底には蟻地獄が待っている。」を参照のこと)。
例えば、胸が苦しくなってきた場合、僕はまず呼吸の仕方を変えてみる。これもジョギングを始めて初めて気づいたことなのだけど、呼吸というのは意外と難しい。特に息を吐くのが難しい。吐けば身体が勝手に吸ってくれるが、吸ったからと言って身体が勝手に吐いてくれるわけではないのだ。息を吐くのはかなり意識的にやる必要がある。息を吐き易い口の形、というものが何通りかあるように思うので、いろいろ試してみたり(その代わり、妙な表情で走っている変なオジサンになってしまう)、呼と吸の回数を変えてみたり、呼吸のリズムを大きく変えてみたりする。うまくいけば、呼吸の仕方を変えるだけで、もうしばらくは均衡を維持できる。
ただ、単一の要素を変化させるだけの対応には限界がある。いずれ均衡は維持できなくなる。そこで、今の均衡点を捨てて、次の均衡点を探し出すことになる。

意図的にストライドを変えてみたり、ピッチを変えてみたり、手の形(グーにするかパーにするか)を変えてみたり、腕の振り方を変えてみたり、いろいろやっていると、第2の均衡点が見つかる。楽チンなので、しばらくはこの均衡点で走り続けることになる。ただ、当然、この均衡点もいずれ維持できなくなる。そうなれば、第3の均衡点を探し出すことになる。
1時間くらいジョギングしていると、こういう均衡点を3つ・4つ経験するように思う。僕の場合、普段のジョギングでは、35分〜55分くらいの均衡点が一番楽に走れる(たぶん、スピードも一番乗っているのではないかと思う)。
たぶん、複数の均衡点を自分で選択できるようになったら、かなりの武器になるのだろうと思う。僕は基本的に好きに走っているだけなので、均衡点を自分で選択する、という発想がない。苦しくなったら、次の均衡点に移るだけだ。普段のジョギングはそれで充分だし、ハーフマラソンはそれで何とかなった。ただし、フルマラソンはこれではキツいようだ。フルマラソンでは、おそらく全体のペース配分の重要性が飛躍的に大きくなるのではないかと思う。この辺りが、フルマラソンを走り切るために乗り越えなきゃならない僕自身の課題なんだろうと思う。

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