『プログラミング言語の仕組み』
黒川 利明(著)
朝倉書店
1997年
★★☆☆☆
「情報科学こんせぷつ」シリーズ(野崎昭弘・黒川利明・疋田輝雄・竹内郁雄・岩野和生(編) 朝倉書店)の第2巻。刊行されたのは1997年だが、1990年代前半に執筆された本のようだ。
情報系の大学新入生向けテキスト、といった趣。計算機科学・計算機工学のそれなりの領域をカバーしようというシリーズ中の1冊、という位置づけ。コンピュータについて常識的な知識を既に持っていることを前提に、特定のプログラミング言語を用いずに一般的なかたちでプログラミング言語について述べている。切り口としては、プログラミング言語の役割、プログラミング言語の種類と歴史、プログラミング言語を成り立たせている要素と構成、開発環境とツール、といったところ。
プログラミング言語という観点から、プログラムそのものやプログラミングという作業を眺めてみよう、という本。特定のプログラミング言語に依存せずに、どんなプログラミング言語を用いても共通して現れる基本的な事柄、プログラミング言語の本質について論じよう、という本なのだが…、このコンセプト自体に無理を感じる。特定のプログラミング言語を用いた具体例を示すことを禁じ手としてしまったため、抽象的な議論の背後にある具体性が読者には見えてこず、簡単なことをわざわざ難しく書いたような本になってしまっている。通常「プログラミング言語の役割はプログラムを記述することです」の一言で終わらせてしまうようなところを、わざわざ「プログラミング言語の役割」という1章を設けるあたり、プログラム・プログラミングについての深い洞察を有している著者ならではの構成であり、それはそれで期待して読み始めたのだが…。もし定価で買っていたら大いに落胆していただろうと思う。
ちなみに、「情報科学こんせぷつ」シリーズでは、他に、コンピュータ、プログラミング、OS、ソフトウェア工学、コンパイラ、パターン情報処理、GUIライブラリ、グラフィックス、データベースに関する巻が刊行されている(シリーズ第4巻と第6巻は未だ刊行されていない?)。シリーズのラインナップを決めていく過程で、本書のコンセプトだけが先行してしまったのではないか、という印象。シリーズの全巻を読んでみたいという人以外には正直オススメできない(その場合も、図書館で借りて読むことをオススメする)。
本文150ページ程度。
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Kota's Book Review

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