『たくろくガールズ』
ノッツ(漫画・イラスト)
サウンド・デザイナー編集部(文・構成)
2016年
サウンド・デザイナー
★★★☆☆
月刊誌『サウンド・デザイナー』に連載中の「自宅録音あるある4コマ漫画」を再編集し、自宅録音・DTMによる音楽制作を楽しむ上での重要キーワードを初心者向けに易しく解説した本。自宅録音・DTMにおいてどんなことがテーマになるのかがオボロゲに見えてくる。サブタイトルは「マンガで楽しくわかる! 宅録&DTMの本」。
1ページ1ネタで84ネタ。各ページの縦右半分が4コマ漫画、左半分が解説文と写真、のレイアウト。特に章立てもなく、大まかなテーマ毎に関連するネタが並べられている。漫画のコンセプトは「宅録あるある」。正直、絵もオチのパターンも同人誌レベルだとは思うが…、主人公のモヨちゃんを始め4人の「たくろくガールズ」はみんな可愛いし、楽しく読める(笑)。漫画で和んだ後で、そのネタについての解説を読む、という趣旨。カバーを外すと、表紙と裏表紙上に本編には掲載されていない4ネタが印刷されている(これに関しては解説はなし)。
テーマとしては、自宅録音に使う機材(オーディオ・インターフェース、マイク、ミキサー、モニタースピーカー、ヘッドフォン、防音・吸音材、等々)、ソフトウェア(DAWソフト、各種プラグイン、スマホ・タブレット用のアプリ、等々)、様々なノウハウ・TIPS(作曲、編曲、録音、ミックスダウン、等々)、が中心。モヨちゃんが一番気にかけているのは「録音」「波形編集・加工」「編曲」「ミックス」だと思う。逆に言うと、作詞・作曲や楽器演奏、編曲、等に関しては「やろうと思えばやれる」ことが暗黙の前提となっている。僕なんかは一生「作曲」なんてできるようになる気がしないのだが…。
僕自身は『サウンド・デザイナー』誌を1度も手に取ったことがなく、雑誌のコンセプトや雰囲気、想定読者層もよくわからないのだが…、「特にプロを目指したりはしていない素人が趣味として楽しむ自宅録音・DTM」をテーマとしている雑誌なのかな、という印象。ただし、素人とは言っても「既に始めている人」「(インターネット等で)作品を発表している人」を対象とする雑誌のようで、「言うまでもない当然のこと」は話題になっていない(例えば、PC上でDAWソフトを操作するワケだが、PCに関しては話題にならない)。そのため、自宅録音に興味はあるが何から始めていいのか(何が必要なのか、すら)わからない、という人には、「常識中の常識」の部分がゴソッと抜け落ちているように感じるのではないかと思う(と言うか、僕自身がそう感じた)。何と言うか、「枠組み」「大枠」をもっと明確に示して欲しかったように思う(オボロゲには見えてくる)。
ちなみに、漫画を描いている「ノッツ」さんは「knots」さんのようだ。人間関係のネットワークの「結び目」をイメージしたペンネームなのかな?と考えると、ノッツさんの人柄が透けて見えてくるようにも思う。『ソラミちゃんの唄』(2013年 芳文社)、『SONGBOOK』(2015年 小学館)なんて、宅録ミュージシャンと漫画家の2つの顔をもつ(と言うか、本人としては渾然一体となっているのだろうが)著者ならではの作品なのかもしれない。漫画家としての作品にも興味が湧いてきた。
本文120ページ程度。
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Kota's Book Review

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