「ホントはやさしい センター・中堅私大の場合の数・確率(他)(文英堂)」
徒然レビュー
講義調をとり入れているが網羅性、到達度ともに高い。苦手だけど受験に必要な人へ
「ホントはやさしい センター・中堅私大の場合の数・確率(/数列/ベクトル)」
「ホントはやさしい 中堅国公立・私大の微分・積分」※数学V(文英堂)
分野別に、教科書レベルからセンターレベルまで(「微分・積分」は入試基礎レベルまで)丁寧に解説した講義調参考書。旧課程時代に「苦手だけど受験に必要な人のための」シリーズとして発売されていたものの焼き直し。内容的にはまったくといっていいほど変わっていないが、元の本が当時としては画期的ともいえる完成度の高さをほこっており、今見ても見劣りしない。
節ごとに、まずは基本事項の丁寧な導入があり、そのあと例題の解説が何題か続く。導入からまるで板書のような紙面で読者にイメージをもたせ、節の最後ではセンターレベル(数学Vは中堅国公立レベル)の問題まで扱っている。ページの途中から問題文が始まるところもあるが、どの問題も、考え方と解答にページ数を割いて詳しく解説してあり、好感が持てる。かといって、網羅性の低さは感じさせない。紙面も多少「うるさい」感じがするが、このノリに慣れてしまえば意外とすんなりと読める。このあたりのバランスが絶妙。
旧課程版も高く評価していたが、最近は薦めるのを封印していたので、筆者自身、新課程版の発売にホッとしているところである。タイトルは旧課程版の「苦手だけど〜」のほうがインパクトがあってよかったが、今回の「ホントはやさしい」でも、優しく再導入してくれるというニュアンスは残しており、このあたりはさすがと言うしかない。ただ残念なのは「微分・積分」。数学Vという文言がタイトルから外れてしまったため、他の3冊からの流れで数学Uのそれと勘違いしやすくなってしまった。「関数」や「極限」の分野に関しても扱っているわけだし、いっそ単に「数学V」としてくれた方がわかりやすかったのでは。