「土曜日に差がつく 数学V・C 典型問題エクササイズ(河合出版)」
徒然レビュー
補助的役割を前面に押し出した、公立高校の生徒が主対象の演習書。テンポよく進む
「土曜日に差がつく 数学V・C 典型問題エクササイズ」(河合出版)
教科書の問・例題レベルの代表的なパターンに絞り、丁寧に解説したコンパクトな演習書。土曜日を使って英語・数学の基礎力を養うという非常にわかりやすいコンセプトのもとに編集されており、数学ではシリーズ4冊めにあたる。
テンポよく演習できることを意識した本によく見られる、見開きで1つのテーマを扱う構成になっていて、例題にあたる「典型問題」枠に計算問題が中心で3〜4題程度が収録され、答案形式の解答と解説が続き、最後の右下に「類題演習」として同タイプ・レベルの問題が収録されている。大体20分程度で終えられるようになっていて、目安としては1時間で3つ程度のテーマを消化できる。分量を減らしたり、逆にまとめて取り組んだりというメリハリもつけやすいので、教科書学習で手一杯の人が他書と併用しても邪魔にならない。帯にも大雑把な学習計画が紹介されていて、これも計画としては至って現実的である。数学T・A・U・Bまでは何とか来たけれど、V・Cに入って計算ミス(練習不足)が気になりだした人には、手遅れにならないうちにこの本で調子を取り戻すことをおすすめしたい。
気になったのは典型問題の解説部分。確かに「読ませる」部分はあるし、全部が全部難しすぎるとは言わないが、「典型問題エクササイズ」というタイトルの本の中で、この内容をこの語り口で語るべきかどうかには疑問符がつく。正直、これではこの本を使わなければならない生徒さん(特に数学の苦手な人)には読んでもらえないと思う。
さて、典型問題の解法習得および計算練習用ということなら、類書として「カルキュール〔基礎力・計算力アップ問題集〕」(駿台文庫)が真っ先に思い浮かぶ。こちらは計算に特化した内容で、別冊解答の詳しさが印象的だが、細切れの時間を使うことは前提としておらず、網羅性を優先している。さらに、問題文だけが一覧になっていることで、分野全体が見渡せるメリットもある。ただ、この手の本の主対象となるレベルの受験生の多くが、T・A・U・Bに対しても同じような練習を積まなければならないであろうことを考慮に入れると、本単体としての機能性やコンパクトさも見過ごせない。うまく使い分けて欲しい。