「3割購入&8割理解(使い始めと使い終わりの目安)」
参考書の選び方・使い方
学校の授業で使う本なら、買ったりもらったりしたときにその内容がひとつも理解できなかったとしても、どうせ授業でその内容を扱うのだから問題はないのですが、自学自習で使う場合はどうでしょう。極端な話ですが、もし1ページめの1問めの解き方がいきなり分からなかったとしたら、予備知識と呼べるものをどこで補い、何をヒントに問題に取り組むのでしょうか。
ここでは、参考書の使い始めと使い終わりの目安として筆者がいつも言っている「3割購入」「8割理解」についてお話ししておきます。
まず「3割購入」ですが、これは本全体をザッと見て3割程度の問題には自力で取り組めそうなものを選ぶべきだということ。3割というのは、筆者のこれまでの指導経験から感覚的に出てきた数字ですが、この3割をきちんとやれば基礎知識の確認もできますし、解説をよく読めば、分かっているつもりが曖昧にしていた弱点なども発見できます。そういう積み重ねが、上のレベルの問題に取り組むためのヒントにもなってくると筆者は考えます。
あと、全部が全部難しい問題だと疲れてしまうので、たまには簡単な問題をザッとやり直すような時間帯があってもいい、ということもありますね。同じ1冊買うのなら、全部が全部難しい問題ばかりが収録された本を買わなければ損だと考える人もいるようですが、そういう浅はかな考えは捨てましょう。難問にばかり目を奪われると必ず足元をすくわれます。また、最近はそんな「足元」を狙うような入試問題も増えてきているように感じます。
「8割理解」についてもほぼ同じことです。要するに、学校の授業なら、本の最後の1問がどうしても解けなくて悩んでしまったときも質問すれば教えてもらえるでしょうし、さもなくば「解けなくても気にしなくていい」とアドバイスしてもらえるでしょう。これも筆者の感覚ですが、どんな本にも2割程度は突飛な問題、相性の悪い問題が含まれているものです。そういう問題に対して、どうしても今すぐ解けるようにならないといけないんだと思い込む必要もなければ、躍起になる必要はありません。時間のムダです。さっさと先へ進みましょう。
もし、本当に重要な問題ならもっと先へ進んだ時に何らかの形で出てくる可能性が高いし、万が一出てこなくても、他の問題に取り組んでいるうちに、いつの間にか解けるようになるかも知れない。そういうものです。
実はこの「3割購入」「8割理解」の考え方が、新しく参考書を選ぶときだけでなく、すでに持っている本を自分に合った方法で使いたいときにも役立つのです。
収録問題が易から難まで幅広い「青チャート」(数研出版)がいちばんわかりやすいのですが・・・。
この本を使うタイミングとして最もありがちなのが、教科書学習を終えた直後、あとは長期休みですよね。
もし学校の授業で傍用問題集のかなり難しい問題まで扱ってもらっていて、定期考査でも7〜8割とれていれば、この本の「基本例題」はほとんどすべて解けるようになっているでしょう。それなら重要例題や演習問題のAあたりまで含めて3割の問題に手が出るはずなので、これらの問題を中心にやっていき、やった中で8割の問題が理解できるまでやります。
反して、学校の授業では教科書の本文レベルまでしか扱ってもらえなかったか、数学が苦手で、それ以上理解できず消化不良になってしまったとします。それだと、先ほどと同じようにやろうとすると、1つの分野にメドがつくまでとてつもなく時間を要してしまいますよね。
・・・そこで、取り組む問題を絞り込むのです。
たとえば、基本例題・補充例題とその下の類題というふうに限れば、自分の知識の及ぶ範囲が3割をこえないとします。そういう「切り方」を考えたら、割り切ってその中で8割を目指してやっていきましょう。
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多少余談になりますが・・・。
教科書レベルも危ういから「白チャート」にしようか、「白チャート」も出来なかったらどうしようかと、どんどんレベルを下げて悩みのスパイラル(?)に陥ってしまう生徒さんがいますが、特に網羅系に関しては必要以上にレベルを下げない方がいいと思います。どこかのレベルまでは一気にやった方が結局は効率がよくなるということもあるのです。どうしても苦手なところがあれば、そこは講義調参考書などの導入書がたくさんありますから、そういったものを読んで補うようにしてください。
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とにかくこの調子で、1つの分野をひととおり終えますが、その時点で「8割」に達していなかったら、解けなかった問題をやり直す必要が出てきます。
本来「その場で復習」するのが理想ですが、復習だけで時間がかかりすぎるとあせる原因になりますから、やや多めに積み残してしまったなと感じたら、とりあえず次の分野・次の本に進みつつ「間をおいて復習」するように心がけます。まるで身につかなかったときは、中途半端に先に進むよりも、前のレベルに「戻って復習」した方が絶対に良い。
・・・大事なのは、ここであせらないことです。
新たに難しい問題が解けるようになることも大事ですが、そればかりが勉強ではありません。自分は何が分かっていて、何が分からないのかを知ることも、勉強の大事な要素の1つだからです。
既習内容の知識が定着しているかの確認をしたいという質問をよく受けますが、筆者はそんなときほとんどの生徒さんに「チェック&リピート」(Z会出版)を薦めてきました。核になる問題の難易度がちょうどよく、その中で易から難まで幅を持たせて問題を収録してあるからです。
教科書学習時に「青チャート」のレベルにある程度取り組んだことがある人にはほとんど必要ないのですが、傍用問題集もあまり深入りせず、網羅系で言えば「黄チャート」の例題レベルまでしか仕上がらなかったという人には、新たに同タイプの「青チャート」を買うよりも、「チェック&リピート」で差がつく問題を集中的に演習することを勧めます。
本格的な受験勉強のスタートにどんな本をもってくるか、春休みのうちに少しでも考えておくと、スタートダッシュでライバルに差をつけることができます。頑張ってください。
○「黄チャート」(数研出版)
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/136.html
○「青チャート」(数研出版)
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/135.html
○「Z会数学基礎問題集 チェック&リピート」(Z会出版)
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http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/142.html