私大の医学部独特のひねった出題に触れたい人に
「西岡の超対策 私立大医学部数学」(栄光)
この手の本を見ていていつも思うのだが、収録問題を「私大の医学部入試で合否にかかわるもの」というふうに制限すると、どうしても「ただややこしいだけの」問題ばかりになってしまいがちで、そういう問題では受験生にさせたいことも大体決まってくるので(たとえば「平均値の定理」を使わせたいなど)、学習する側もただ解答をなぞるだけになってしまいやすい。
そんな中で焦点になりうるのは「集中力を切らさずに計算もしくは論述をすること」と、あと「時間の節約」ぐらいだが、そういう要素も決してバカにはできない。問題の意味を読み取り損ねたり、あと少しのところでミスをしたりして悔しい思いをしている人には視野に入れて欲しい本である。
同シリーズ「国公立大医学部数学」のレビューにも書いたことだが(→
http://green.ap.teacup.com/reviewermizuno/206.html)、おそらく原型になっているものと思われる「医系数学ノート」(代々木ライブラリー)の弱点が全体的に克服できていないのが残念。この内容で実際に西岡先生の授業を受けたらそういう話も当然出てくるはずだが、処理量の違う別解をいくつか扱い、自分に合った解法の選択を読者にゆだねるなど、じっくり読ませる部分がもっとあってもいいのでは。
こういう名前で出したらある程度の販売数は見込めるものだが、実際に作ってみると内容的にはどうしてもこうならざるを得ない、そんな作り手側の「苦しさ」を感じさせられる。