「志田晶の行列・1次変換 いろいろな曲線が面白いほどわかる本(中経出版)」
徒然レビュー
類書の少ない数学C分野の自習書。学校で授業してもらえなかった人にも
「志田晶の行列・1次変換 いろいろな曲線が面白いほどわかる本」(中経出版)
高校の授業で十分に扱ってもらえないことの多い「数学C」の「行列」「いろいろな曲線」の分野にスポットを当て、入試の基礎レベルまで周辺事項を含めて丁寧に解説した本。初学者から使えてなおかつそれなりの到達点の高さになるように内容が工夫されているほか、数学Cの問題をしっかりやることによって、周辺事項を見直すきっかけにもさせようとしている(たとえば行列のn乗を通じて整式の割り算や等比数列を復習するなど)。
位置づけとしては「佐藤の数学教科書」(東進ブックス)に近いが、こちらほど平板に文章は並ばず、同じ中経出版の「坂田アキラ」シリーズに近いビジュアルな紙面づくりを見せる。
基本事項の解説にも例題の解説にも講義調を取り入れてはいるが、話し言葉べったりではないところにある種の「品位」のようなものを感じる。話し言葉は吹き出しに入れて、教科書的な文章の部分と区別しようとしているのが河合塾講師でもある著者なりの工夫であり、バランス感覚なのであろう。
とにかく、これまで数学Cに関しては「総合参考書の導入を読みながら例題を解いて、とりあえず入試基礎レベルまで押さえましょう」というアドバイスしか出来なかったが、この本の登場で選択肢は増えたといえる。細かい部分を含めて、最終的な評価は生徒の皆さんにお願いしよう。