教科書〜入試基礎レベルの例題集。新課程対応の四訂版も発売された
「数学基礎問題精講」T・A/他(旺文社)
同じ出版社の「数学標準問題精講」(旧「解法のプロセス」)の姉妹編といえる本。教科書〜入試基礎レベル(類書でいえば「黄チャート」など)の総合参考書から例題と類題部分だけを抜き出し、さらに瑣末なものを省いたような構成になっている。指針部分である「精講」が他書より詳しめなのも救いで、学校の授業などで聞き逃しやすい部分をピンポイントで補うのにちょうどよいだろう。新課程版のラインナップも無事揃い、14年度初めからT・A、U・B、Vの3冊が使えるようになった。
例題である「基礎問」は教科書レベルが中心。かなり初歩的な問題から、一部「三角比を含む不等式」や「三角形の形状決定」など一定レベル以上の傍用問題集にだけ収録されているような問題まで扱っている。導入・まとめはなく、他書で導入もしくは基礎レベルの練習を積んできた人がさらに演習量を補うなどの用途に限定されるだろう。が、逆にそう割り切れば分量的にもそれなりだし使い勝手の良い本かも知れない。
昨今、大学入試問題(特に私大の理系学部、中堅以下の国公立大などの)がひねった問題を出して「落とす」ための問題から受験生の基礎知識を確認する問題へとシフトしている現状を耳にするが、そのレベルで苦手分野を残していたり、問題を解く際に万が一ミスを犯したりすると致命的になるということでもあるので、とりあえず教科書レベルを仕上げたら、自身の目標レベル、習熟度をよく考え、難問に触れる方がよいのか本シリーズに収録されている程度の問題を反復練習するのがよいのか判断して学習を進めていきたい。もちろん、学校の授業カリキュラム等の問題もあるので完全にそれだけをやるのは無理にせよ、どこかでそれを意識しながら取り組むようにするだけでも、その後の定着度合いや伸びが違ってくるはずだ。
【リンク】「数学基礎問題精講」(旺文社)が買えます。
※17年2月、数学T・Aの「四訂増補版」が発売されています
※以下は「四訂版」へのリンクです
※旧課程版は以下の「三訂版」
【余談】
新課程版は、表紙カバーの配色が薄い緑色で、表紙の上半分全体に「基礎」の文字がうっすらと入ったデザインになっているが、同じ出版社の「数学標準問題精講」も、薄い青を基調とした同様のデザインで統一されている。ちなみに、通販サイトなどで両シリーズを検索すると、そこに出てくる小さな表紙画像上でも(撮影・スキャン時の明るさ等にもよるが)この薄文字がちょうど読みやすい大きさに映るようになっている。
筆者は、このデザインにした狙いは恐らくそこにあるのだろうと勝手に思っているのだが、もしも機会があれば、この表紙デザインを提案した本人(もしくは、企画を担当された皆さん)にお会いして、その真偽を確かめたいところである(笑)
※06年10月15日、09年3月17日執筆分をもとに12年4月22日、13年4月4日、14年3月16日、17年9月1日
それぞれ加筆修正