「秋山仁 数学センスをみがこう≪基礎編≫(NHK出版)」
徒然レビュー
日常生活に直結した数学の話題集。高1までの生徒さん&指導者向け?
「秋山仁 数学センスをみがこう≪基礎編≫」(NHK出版)
受験参考書ではないが「高校数学」を扱った本の中ではかなり質の高いものの部類に入るので、ここで紹介させていただくことにした。
NHK教育の高校講座「数学基礎」をもとに編集された本。この番組は筆者自身も何度か観たことがあるが、準備に手間のかかるネタや教具が満載で、観ていて本当に面白かった。以前、この番組のテキストを番外で紹介したこともあった筆者としては、こうして書籍化されたこと自体に喜びを感じる。内容的には、予備知識がそれほど必要でないものが多く、中学生から理解できるので、先取り学習のネタにもなると思う。
特に目を引かれたものとして、筆者は「ピタゴラスのテーブル」をあげたい。1個の正方形のテーブルをバラバラにして、面積の和がそれと等しい2個の正方形のテーブルに変えられるというものなのだが、もちろん折り紙などでも同じ形はつくれるにせよ、もし実際にこの大きさのものを目の前にしたら、まったく印象は変わってくるだろうにと感じる。欲を言うなら、本の随所に入る番組からのスクリーンショットが白黒なのが、残念といえば残念。少々値がはってもカラーにして欲しかった。
あと、いち指導者として意見を言うなら、ただひたすら「羨ましい」。テレビ番組、それも教育番組の中で、たった数分しか映らないネタのために、いろいろな教具を実際に考え、作る人がいるわけである。おそらく、秋山先生オリジナルのもの以外に、数学教育などの研究会に出品されたものからも選りすぐりが選ばれ、テレビ用にアレンジされているはずなのだ。そういった数あるネタを「テレビ番組」のかたちにまとめるための企画会議というのは、はたしてどんなものなのだろうか。機会があれば筆者もぜひ同席してみたい。
【参考】その他の秋山仁先生の著書