「センター試験 でた順 ズルい数学T・A/U・B(Book&Books)」
徒然レビュー
コンセプトの勝利?数学が苦手だがセンターレベルに触れたい人向け
「センター試験 でた順 ズルい数学」T・A/U・B(Book&Books)
現役東大生が著者(解答執筆)をつとめるセンター対策本のシリーズ。コンセプトはハッキリしていて、数学が苦手な人向けの効率のよいセンター対策。教科書事項を簡単に確認したあと、高確率で出るパターンを少ない問題数で押さえ、何とか足を引っ張らない程度の点が取りたいという人が主対象だが、秋を過ぎてもこのレベルに達していない受験生も多いと思われるので、出遅れが気になる人は選択肢に加えよう。
特徴として、予備知識の少ない人や学習時間のとれない人にも小刻みにセンターレベルに触れられるようになっていることがあげられる。全体の構成は新課程センター試験の大問構成(第1問[2]など)に合わせた章立てになっているが、各章はさらに基本事項を「出た順」に並べた節に分かれている。各節は、はじめに教科書事項の整理と簡単な練習問題があり、さらに「例題」としてセンターの過去問(またはその一部)が続くという構成。そして、章末にはセンターの過去問を扱った「練習問題特選」がある。
「ズルい」というタイトルから裏ワザ紹介的な内容を想像した人もいるかも知れないが(実は筆者もその1人)、解法自体はむしろ真面目。「出た順」とはいうものの、一応は分野別編集になっているから、(数学という教科の特性もあるのだろうが)極端なヤマをかけるような学習には偏らない。このシリーズは旧課程時代に出た「ヒキョーな化学」から派生したものであるが、もしかするとこちらは(単元ごとの独立性の高い理科という教科の特性もあるが)もっと「ヒキョーな」本になっているのだろうか。こちらに関しては、化学の指導者の皆さんのご意見をぜひお伺いしたいところである。
さて、本論に戻って、最後に欲を言うならばやはり導入部分の内容にいきつく。教科書の基本事項の説明をそのまま抜き出したような内容にならざるを得ないのは仕方のないところだが、章によっては妙にそっけなかったり、逆に「点と直線の距離」などで妙にテクニカルな公式の導出が載っていたりするところなどが目につく(だいいち、センター対策用の演習書で公式の導出を載せる必要があるだろうか?)。著者は東大生とはいえ所詮は「学生」であるし、T・A/U・B通して4名で分担して書いているのだから、荒削りなところも出てこよう。そのあたりをうまくまとめるのが編集側の仕事だと思うのだが、どうだろうか。
【参考】
「センター試験 でた順」シリーズ(Book&Books)へのリンク