牛の炭疸のこと
「夕闇の中、白い包帯がー3」
完全に「防護」した上で、「急死」した「牛の観察」が行われました。
まず、「外貌所見」から始めました。
もし、「炭疸」であれば、幾つかの「特徴的」な変化が現れているはずです。
・・・・・・・
さて、一般的な「炭疸」の「症例」に見られる「病変」ですが、
まず観察するのが、
「口や肛門」など、「天然孔」と称される「ところ」に見られる「出血」です。 一般的に、「天延孔」からの「出血」と言っています。
それと、「皮膚の下」に「浮腫」が現れることです。
「触診」によって「皮膚の下」の「変化」を「確認」することが出来ます。
次いで、「血液の凝固不全」の状態を「確認」します。
「注射器」などで、周囲の「汚染」に注意し、「血液を採取」して見ますと、
「凝固不全で暗色」になった、「タール様の血液」が観察されます。
より顕著な変化は「皮下」などに現れる「膠様変性」と「脾臓の腫脹」なのですが・・「炭疸」を疑うものは、ここまで見ることを『絶対に避け』ます。
それと、例え、以上の「病変」があるからと言って、「炭疸」だとは「断定」出来ません。
「炭疸」以外の「疾患」でも、このような「変化」が出ることがあるからです。
・・・・・・・
さて、この時の「症例」ですが、その「変化」から、
「限りなく『炭疸』が「疑われる」という者でした。
その「理由」ですが、
「天然孔」からの「出血」、
「血液の凝固不全と暗色化」、
「皮下の膠様変性」、
などなどでした。
・・・・・・
さて、 作業も順調に進み、
「消毒」もほぼ終わり、後は「死体」と「汚染した物」の「焼却」だけです。
採取した「材料」を持ち帰り、「病性鑑定」を行う必要があるのです。
それまでは「夢中」でしたが、
「ふと、気が付いたとき」には、
辺りが「僅か」ですが、「薄暗く」なりかけていました。
そんな中に「真っ白い包帯」を腕に巻いた人々が・・・
「薄暗い中」に浮かび上がって見えるのです。
「一人」、「二人」・・・・おおよそ「八人」くらいの「男性達」、と記憶しています。
全て、この近くの「農家の人々」のようです。
私達とは一定の距離を置き、無言のまま・・「立ち尽くして」いました。
誰の「顔」にも「心配げ」な表情をあらわにしています。
「どうした、その包帯・・・」
「・・・・」
「農民達」は無言でした。
「医者にはかかっているのか・・」
の質問に、お互いに『顔』を見合わせて、
「ウン・・」
「お医者さんは何て言ってた・・・・」
「蚊にでも食われたべ、て言ってたが・・」
「蚊に食われた・・・・」
「・・ウン・・」
「どんな具合です、症状は・・」
「矢継ぎ早」の質問に、
「風邪でも引いたようだったな・・・」
とお互いに顔を見合わせて・・無言で、「確認」しているようです。
「熱もあったのか」
「あったと思う、身体がだるかったから・・」
「チョットでいいんだが、包帯を取って、傷を見せてくれませんか」
「農家」の人々は「三々五々」、包帯を取りはじめました。

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