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2010/6/28

すさまじきものは宮仕え  思い出の人達

私の親の知人にO.Tさんという男性がいた。
O.Tさんは名古屋市内のインテリアの会社に長年、勤めていた。
このインテリアの会社の社長、K.N氏も私の親の知人であった。
数十年前のことである。
O.Tさんの部下が会社の金を横領してバレたことがあった。
K.N社長は横領した本人のみならず、連帯責任として上司のO.Tさんにも罰を与えたのである。

「O.T、本来ならお前のようなやつは、ウチの会社においとくわけにいかんが、お前は10代の頃からずっとウチでがんばってきたから、クビだけは勘弁してやる。
そのかわり、今迄会社に損害を与えた分はしっかりと清算させてもらうからな。」
K.N社長はそう言うと、それ以降ずうっと、新人の初任給より安い給料でO.Tさんを働かせたのである。
O.Tさんは学校を卒業してから、この会社一筋で他の世界を知らない。
やめて転職するにも、面接で今の会社をやめた理由を聞かれたら今以上の所に転職できないだろうし、そのころ既に結婚していたので今更よそへ行けない、といった不安感に押しつぶされそうになって、結局O.Tさんは泣く泣く薄給に甘んじながら、今の会社に留まり続けたのである。

また、K.N社長はボーナスを支給するさいにも、O.Tさんに手渡す時は社員みんなの前で、
「O.T、お前はウチの会社にあれ程の損害を与えたのだから、たとえ少なくても貰えるだけありがたいと思え。」
と言って新入社員よりも少ない額を与えていたのだという。
それにしても普通、ここまでひどい仕打ちをされたら、いくらなんでも会社をやめたくなるものだし、ましてや、O.Tさんが直接、悪事を働いたわけではないのである。
だが、O.Tさんは耐えながら勤め続けた。
おそらくO.Tさんは昔の丁稚奉公のような感覚で会社勤めをしていたろうし、初めての会社だから社長やその一族にそのように会社に忠誠を誓うように教育されてきたのだろう。
よくぞここまで奴隷根性が身に付いたと思うが、ある意味、これは一種の洗脳だと思う。
まさに、「すさまじきものは宮仕え」ということか。

そしてそれから数年後、O.Tさんの妻がとうとう愛想を尽かして出て行ったそうだが、O.Tさんはずっと今の会社で働き続けた。
そして、定年が過ぎてもこの会社の別の支店でアルバイトとして働いたという。
その頃の手取りの額を聞いたことがあるが、これなら仕事をせずに生活保護を受けた方がええんとちゃうか、と思うような金額だった。

ある程度人生経験を積んだ読者の方ならここまで読んでピンときたと思う。
K.N社長はO.Tさんが直接、会社の金を横領しようがしよまいが、どうでもよいのである、と。
会社に損害を与えた連帯責任としてベテラン社員のO.Tさんを薄給でコキ使うことができるし、他の社員への見せしめのためにも、おそらく彼をクビにはしなかったんであろうと。
そんなK.N社長は経営者としての才覚は良くても人間性としてはいささか疑問だが、会社のトップという者はこれくらいのことができなければ務まらないのかもしれない。
しかもO.Tさんは骨の髄まで丁稚根性が染み付いているので、ますますK.N社長の思うツボであったであろう。

・・・
そして今から数年前、K.N社長は亡くなった。
知人であるため、私も私の両親も彼の葬儀に参列した。
このK.N社長という男は会社でも家庭でも相当なワンマンだったようで、彼の子供夫婦の内、1組は疎遠になっておりこの日の葬儀にも来なかったそうだが、O.Tさんはまるで社長の身内のように葬儀の雑事をこなしていた。
私はこの時、O.Tさんの心中はいったい、どんな気持ちだったんだろうと思わずにはいられなかった。

それから数日後、O.Tさんは私の親の家に挨拶にやって来た。
まるで今迄の人生を振り返るように、ポツリポツリと私の母と昔話をしていた。
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タグ: 人生



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