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2010/9/16

行方不明になった男  思い出の人達

10年程前だっただろうか、私の家の傍のマンションにSという男がいた。
Sは水商売の店に勤めていたが、この業界に入る前はなんと、中部電力にいたという。
しかも彼には妻子がいたが、会社をやめる際にもめて別れたのだと言う。
(そりゃ、そうだろう。)
だが、彼はどうしても飲食店をやりたかったと言っていた。
Sはけっこう、口がうまくマンションの大家とも打ち解け、マンションに空室ができるとうまい具合に友人を紹介しては入居させたりしていたので、大家からも一目おかれていた。
だが私はそんなSがなんとなく胡散臭く感じられ、あまり好印象を持っていなかった。
一度だけSの作った料理を食べさせてもらったことがあるが、いかにもこういうレシピのとおり作りましたよって感じで、本当に、これで自分でオーナーシェフでもやるというのか、というのが率直な感想だった。
勿論、私は友人でもないSに素直な気持ちを言うつもりはなく、単にお礼を言ったにすぎなかった。
その頃の私はSに対して心の中で、
「こいつは、どこまで世の中をナメきっているんだろう。
要領と自分の能力だけで何でもできると思い込んどるんやろか。」
と、常に批判的であったし友人が多いわりには、誰か彼に忠告することができる人間が廻りにいないのか、と疑問に思っていた。
暫くするとSは、
「ある人から店をまかされるようになった。」
と言ってきた。
私はあの程度の腕前で本当にやれるのかとびっくりしたと同時に、彼がとんとん拍子に自分の人生を切り開いていくのを見て、内心羨ましく思った。
生まれてこの方、日の当たるような人生を歩んだことのない私には、一瞬だが彼が自分より運や実力のある人間に思えたものである。
・・・
だが、このころから彼の人生が下降し始めたようだ。
案の定、Sが担当するようになってから、彼の店は閑古鳥が鳴くようになった。
やがてその店は閉め、彼をまかせたオーナーとももめてSは無収入になった。
Sは同時に家賃をため始め、友人からも借金をしまくり大家等、周囲の人達を心配させるようになった。
そして数ヶ月経ったある日、私はとんでもないものを見てしまった。
Sの住んでいるマンションの前で、Sが大勢のスーツ姿の男達に囲まれて無理やり車に乗せられていたのである。
私はそれを見た瞬間、咄嗟に柱の奥に隠れて一部始終を見ていたが、
「とうとう、来る所まで来たか。」
と思った。
そしてこの日がSを見た最後の日となったのである。
勿論、その後Sがどうなったかは定かでない。
それにしてもVシネマやTVドラマではよく見るシーンをまさか、目の前で本当に見るとは思わなかったので、その時は我ながら驚いたものである。
・・・
それから暫くして大家はSが何の音沙汰も無く、連帯保証人であるSの親とも連絡がつかないので、とうとう部屋の強制退去に踏み切った。
そのころに大家にSの部屋を見せてもらったが、足の踏み場もない程、部屋は散乱し、彼の荒んだ生活態度を物語っていた。
その時、私はゴミの山からアルバムを見つけた。
アルバムには彼の今迄の人生を捉えた多くの写真が貼られていた。
・・・
だが、話はここで終わったのではなかった。
彼の部屋に入ってから数日後、夜中に私は突然、金縛りになったのを今でも憶えている。
金縛りにあって私は必死になって、
「お前は誰や。
何でこんなことをする。
言いたいことがあるなら、ハッキリとオレに顔を見せいや。」
と、心の中で叫んだのである。
すると、私の目の前におぼろげに現れたのは(夢の中だったのかもしれない)、Sの顔だったのである。
翌朝、私はその夜のことを思い出してこう思った。
「あいつはもう、この世にはいないかもしれんな。」
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タグ: 人生 サラ金



2010/10/4  19:13

投稿者:なすのようなモノをかって....

やるやつは胡散臭くないんか?

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