「とっくみあい教本(2)投げは【片手・うつぶせ・死角から】」
格闘技
「とっくみあい」「寝技」は、顔見知りの相手ともめて、大事に発展する恐れのあまりないとき(酔って暴れる友人を取り押さえる、など)にはそれでもいいが、自分の本拠地でない場所とか、相手に助っ人が来る可能性がある場合とか、面識のない相手とのマジのケンカであるとか、相手が何か隠し持っている可能性のある場合とかでは、用いるべきでない方法であろう。
それゆえ今回は「寝技」でなく「投げで倒す」ことをまず考えてみる。
基本的には、《死角(斜め後ろ)から・片手で肩口をつかみ・「裏」の投げで倒し・ヒザで押しつぶす》(→おまけの一撃→忘れ物・落とし物確認→走らずに逃げる)ということを考える。
「裏」とここでいうのは、通常の柔道の投げが仰向けに倒すのに対し、うつぶせに倒す方向のもののことである。
通常つまりいわば「表」で、右足を使う場合、
・大外刈り:
右足で相手の
右足を外から
時計回りに刈る
・小内刈り:
右足で相手の
右足を内から
反時計回りに刈る
・大内刈り:
右足で相手の
左足を内から
時計回りに刈る
・小外刈り:
右足で相手の
左足を外から
反時計回りに刈る
ことになる。いずれも相手は仰向けに倒れる。
これに対してここでいう「裏」では、
・大外刈り:
右足で相手の
左足を外から
時計回りに刈る
・小内刈り:
右足で相手の
左足を内から
反時計回りに刈る
・大内刈り:
右足で相手の
右足を内から
時計回りに刈る
・小外刈り:
右足で相手の
右足を外から
反時計回りに刈る
ことになり、いずれも相手の背後からの技で、相手はうつぶせに倒れる(あるいは、ヒザをつく)。もちろん柔道では無効となる。
【表】
・大外刈り:こちら右−相手
右−外から−時計回り
・小内刈り:こちら右−相手
右−内から−反時計回り
・大内刈り:こちら右−相手
左−内から−時計回り
・小外刈り:こちら右−相手
左−外から−反時計回り
【裏】
・大外刈り:こちら右−相手
左−外から−時計回り
・小内刈り:こちら右−相手
左−内から−反時計回り
・大内刈り:こちら右−相手
右−内から−時計回り
・小外刈り:こちら右−相手
右−外から−反時計回り
「内」「外」は、相手の股の内側からか、外側からかによる分類である。
「大−」がつくものは、右利きの場合時計回り(左足でかける場合逆)つまり利き手側に回す、「小−」のつくものは、右利きの場合反時計回りつまり利き手と反対側に回す、ものであることがわかる。
そして【表】は相手と正面から向き合った場合、【裏】は後ろからかける場合である。
【裏】の投げの場合、斜め後ろから肩口をつかんだ手の押し・引きだけに頼らず、
かならずステップワークと、片足を軸にしての、もう一方の足でのすり足の回転を組み合わせる。
特徴としては、
(a)相手の死角から・(b)片手でつかみ・(c)うつぶせにさせるように投げる
ことがある。つまり、
相手の体の中心線をまたぐような(正面からの)向き合い・つかみあいにならないようにする。真後ろもよくない(金的を蹴られてしまう)。
空手ならば(c)のかわりに蹴りがくるところであろう。
(c)の方法だと、
通常の受け身がとりづらくダメージ(心理的にも、顔や腹から落ちるのは怖い)があるが、そのかわり後頭部から倒れて受け身がとれなかった場合にくらべて、すぐに大事に至ることもないので、硬い路上で重傷を負わせてしまう危険は小さい。鼻がつぶれる、前歯が折れる・ぐらつく・メリ込む、アゴ・鎖骨・胸・腹・ヒザなどを強く打つぐらいだ。
逆に、自分が倒れるときアゴを引いて思い切って額から落ちれば痛くても大ケガはしない。
【裏】の投げの挙動はすべて【表】つまり通常の柔道の投げの動きが基本になる。というより、現在稽古され競技で使われている【表】技は、【裏】の投げの基本を安全に稽古し習得するための方便でもあったのかもしれない。
ところで、なぜ「片手」なのかというと−。なにも「片手」でなければならないのではなく、もちろん添え手によってコントロールをより容易にしてよいのだが、「片手でできる」挙動を基本とする。それは次の理由による。
(1)
両手でつかむ投げはどうしても相手と正面から向き合うことになりがちで危険であり、こちらの有利がなくなり、よくて五分になってしまう。
(2)
片手に何か手放せないものを持っている場合もありうる。それは護身用の得物かもしれない。得物は、それゆえ、片手で扱えるものであるべきである。たとえば、60センチほどに切った堅めのゴムホース。あるいは、ミニマグライト。
もし片手(+添え手)で倒せそうにない場合には、投げにこだわるのはやめること。
【今回のポイント】
(イ)
投げは「片手・うつぶせ・死角から」。
(ロ)【裏】の投げの挙動は【表】技が基本。安全な【表】の稽古で体に覚えさせる。
細かい技法と変化の話は次の機会にする。

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