「里山常識のウソ 伐採更新・superficial knowledge for coppice maintenance」
管理 management
自然保護運動の大衆化が進んだ1970〜80年代、木を切るのは悪と考える風潮が広がったことは否めません。植林地で伐採をしている林業者を「自然破壊をしている」と説明した教師もいたという笑い話さえありました。雑木林が伐採をくり返しながら利用されてきたことを知っている人も少なくない現代とは隔世の感があります。
雑木林のクヌギやコナラは萌芽力が強く,切り株からふいた芽が再び成長します。これを「萌芽更新」と呼ぶこともかなり知られるようになってきました。しかし今度は逆に,どんな雑木林でも伐った後は回復して来るというイメージが一人歩きしているようにも見えます。
萌芽更新が無条件のサイクルでないことは,昨年春に伐採された横沢入の斜面を見ればよく分かるでしょう。太いもので樹齢40年以上たったコナラの多くは,すでに萌芽力を失って切り株のままです。ここに雑木林を復活させるには,新たにコナラなどを植林する必要があります。
さらにここでは,土の中で眠っていた明るい環境を好む植物がいっせいに芽吹いてきましたが,単純に喜ぶわけにはいきません。このあとに草や低木が密生して日陰になり,再びこれらの植物が枯れてしまえば,土の中で保存されていたシードバンクを使い果たしてしまうでしょう。そのために著しく生物多様性が下がった里山の例もあります。それを防ぐには定期的な草刈り等の管理が行なわれることが必要です。
こうした管理計画を立てたうえで伐採が行なわれるのであれば,里山環境の保全に役立つかもしれません。しかし計画も手入れのマンパワーも無いのに,いたずらに伐採を進めることは,単なる里山ごっこの山荒しに過ぎません。さらに伐採木も有効に使われる体制が整って,初めて里山保全という看板を掲げられるのではないでしょうか。
横沢入の雑木林になかなか手が入らないことを疑問に思う方も多いかもしれませんが,まずはこうした伐採ー利用ー管理のシステムづくりから考えるべきでしょう。これには市民だけでなく行政の取り組みも必要なことはもちろんです。
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