ワタナベをいつも通りにぐりぐりなでまわしていた時、異物に気がついた。なんだ?と確認してみると、脇腹に近い位置の皮膚下に米粒くらいのぷっくりしたモノができている。
湿疹ではなく、皮膚の下というのが気になる。
ワタナベはそれを触られても、痛くもなんともないらしい。
ネットでいろいろ調べたのだが、多分悪いものではない…らしい。
でも「腫瘍は早期に治療するのが鉄則です」という一文がどうにも恐怖。
もしかして全然ちがう病気だったら?
と思うと不安になってきた。
トシだし、通院によるストレスがコワイのは確かだが、そんなことで治る病気が手遅れになってしまったらどうするのだ!
ということで、早速朝イチで病院に行くことにした。
前の晩のうちに、ワタナベに見つからないように納戸からキャリーを引っ張りだし、密かにお風呂に隠しておく。
そして朝、メシメシ〜と騒ぐワタナベをなにげ〜に抱っこして洗面所に直行、そのままお風呂に置いてあったキャリーに…。入れられた瞬間、ワタナベが「ぅあ!」と叫んだ。やっと思い出したらしい。
7年ぶりにワタナベと一緒に車に乗った。昔はずっとニャゴニャゴ騒いでいたはずなのに今回はおとなしい。たまに左手を出して、私の指を触ったりしている。
診察の結果は脂肪腫だった。猫にはよく出るものらしく、一度出るとクセになってしまうのが難点だが、悪性のものではない。注射器でチュッと吸い上げて終わりだった。
「ワタナベくん、久しぶりに見たけどずいぶんやせたね〜。年寄りの身体になったね。背筋が落ちてきてる。…だからかな〜顔が目立つね」
トン先生がワタナベを触って言った。
顔、目立つのか…。そう言われれば、昔は身体の割に顔が小さかったはずだった。
せっかく来たので、腎臓と肝臓の検査もしてもらうことにした。
左手から採血。
「猫ちゃんでこんなにスムーズに腕から採血できるコあんまりいませんよ。健康状態がいい証拠です。循環がいいんですね」
ほめられた〜!
検査の結果、腎臓が悪くなっていた。予想していたことだが、やはりショック。19歳にもなれば当たり前のことなのだが、なんでかいつまでも元気なよーな気持ちがどこかにあるのだ。
だが肝臓は若い猫に負けないくらいの正常値だった。腎臓の悪いところを肝臓が補ってくれているらしい。
その辺をふまえて、先生とこれからの生活の注意点を話して、ワタナベの7年ぶりの通院は終わった。
帰りの車の中から、満開の桜が見えた。
「ワタちゃん、桜だよー」
キャリーを覗き込むと、なぜか、中できっちり香箱座りをしていた。
そんないつも通りのワタナベが家に戻り最初にしたことは、やはりいつも通り、ゴハンの催促だった。
画像は、顔、デカイっすか?


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